不眠症のセルフチェック方法とは?
アテネ不眠尺度というチェック表を用いると、自分で不眠症かどうかを確認できます。
アテネ不眠尺度とは、WHOが作成したチェック方法を、日本語に翻訳したものです。
以下に項目を記載していますので、最近の1か月間で週に3回以上感じたものをチェックしてみましょう。
Q1.布団に入ってから寝るまでにどれくらいの時間がかかりましたか? | 0点:いつもと同じ 1点:いつもより少し時間がかかった 2点:いつもよりかなり時間がかかった 3点:いつもより非常に時間がかかった または眠れなかった |
Q2.夜寝ている間に途中で目が覚めましたか? | 0点:ほとんどない 1点:たまにある 2点:結構ある 3点:頻繁にあって困っている または眠れていない |
Q3.起床時間よりも早く目が覚めてしまい、眠れなくなったことはありますか? | 0点:ほとんどない 1点:たまにある 2点:結構ある 3点:頻繁にあるあるいは眠れなかった |
Q4.夜間と昼寝の睡眠時間を合わせて睡眠時間は足りていますか? | 0点:足りている 1点:少し足りない 2点:かなり足りない 3点:非常に足りないあるいは眠れていない |
Q5.睡眠全体の質はよいですか? | 0点:よい 1点:まぁまぁよい 2点:少し悪い 3点:悪いまたは眠れていない |
Q6.昼間の気分はどうですか? | 0点:よい 1点:普通 2点:悪い 3点:かなり悪い |
Q7.日中の活動に身体的または精神的に支障はありますか? | 0点:ない 1点:たまにある 2点:結構ある 3点:非常にある |
Q8.日中の眠気はありますか? | 0点:ない 1点:たまにある 2点:結構ある 3点:非常にある |
上記8つの質問の合計点数に応じて、不眠度が分かります。
- ・1~3点:睡眠に問題はない
- ・4~5点:不眠症の可能性が考えられる
- ・6点以上:不眠症の可能性が高い
セルフチェックの結果、不眠症の可能性が高いと出た場合はどうすればよいのか、次に説明します。
不眠症セルフチェックで数値が高い場合はどうすればいい?
セルフチェックにて、不眠症の可能性が高いと判断された場合は、改善できるような対策が必要です。
改善方法には、以下の2つが挙げられます。
- ・日常生活の見直し
- ・病院を受診し医師に相談する
それぞれについて、詳しく解説します。
日常生活の見直し
不眠症の原因として、以下のような日常生活の習慣によるものが挙げられます。
- ・平日と休日の起床時間にバラつきがある
- ・夜寝る前にスマホやタブレットを見ている
- ・寝る前にアルコールやカフェインを摂取している
- ・過度な運動をしている
上記のような生活習慣は、眠りの妨げになり不眠症になる可能性があるため、日常生活を見直してみましょう。
おすすめの対処法は、以下の通りです。
- ・毎日同じ時間に起きる
- ・朝起きたら太陽の光を浴びる
- ・寝る前のアルコールやカフェインを控える
- ・リラックスできる環境を整える
- ・寝心地のよい寝間着や寝具を使用する
自分で改善できるところから挑戦してみてください。
病院を受診し医師に相談する
日常生活を見直しても症状が改善しない、眠れないことで日中の活動に影響が出ている場合などは、医療機関を受診することをおすすめします。
まずは、かかりつけ医や内科を受診して相談しましょう。不眠の他に以下のような症状がある場合は、心療内科や精神科を検討してもよいです。
- ・ストレスを感じていて寝ようと思っても眠れない場合
- ・日中の倦怠感、集中力の低下、強い眠気などを感じる場合
自分の不眠症について分析して、診療科目を選びましょう。
不眠症とは?
不眠症とは、入眠障害・中途覚醒・熟眠障害・早朝覚醒の症状があり、日中の倦怠感や集中力の低下などがみられる病気を言います。
この100年で、日本人の睡眠時間は1時間半ほど短縮されており、全人口の10%が睡眠不足を自覚していると言われています。
不眠症の4つの症状について、具体的に解説します。
不眠症の種類①入眠障害
入眠障害とは、布団に入ってから眠りにつくまでに時間がかかることです。布団に入ってから30分~1時間経っても眠れず、日中の活動に影響を及ぼすほどの睡眠不足に陥ると、入眠障害とみなされます。
眠気がおとずれないことで焦りを感じ、さらに眠れなくなるという悪循環に陥ることもあるでしょう。
入眠障害は、不眠症のなかでもよく見られる症状だと言われています。
入眠障害について、以下の項目に分けて詳しく解説します。
- ・入眠障害の原因
- ・入眠障害の対策
入眠障害の原因
入眠障害を引き起こす原因は、以下のものが挙げられます。
原因 | 具体例 |
---|---|
ストレスや生活環境の変化によるもの | ・人間関係のストレス ・楽しかったことや嬉しかったエピソードもストレスの原因となり、入眠障害を引き起こす ・翌日に重要な会議が入っている、絶対に寝坊できないイベントがあるなど、緊張を感じる |
就寝、起床時間の乱れ | ・夜勤がある職種 ・海外旅行による時差ボケ |
アルコールやカフェインの摂取 | ・寝る前の飲酒やコーヒー、紅茶などの摂取 |
病気によるもの | ・うつ病や不安障害などの精神疾患 ・発熱、咳、喉の痛みなど身体的症状 |
寝つきが悪い場合は、上記のような原因がないか確認してみましょう。
入眠障害の対策
入眠障害かも?と思ったときにできる対策は、以下の通りです。
- ・寝る前のアルコールやカフェインの摂取は控え、カフェインレスやノンアルコールを利用する
- ・寝る時間にこだわらず、眠気を感じたら布団に入るようにする
- ・何時に寝ても、起床時間を固定する
前日眠れなかったときに、睡眠時間を確保しようと早く布団に入ることもありますが、眠気を感じていないときに布団に入ると逆効果です。
早く寝なくてはと焦りを感じてしまい、眠れなくなるからです。眠気を感じたら布団に入るようにすると、スムーズに眠りにつけるでしょう。
また、起床時間を統一することで体内時計が整うため、寝る時間が遅くなったから遅く起きるではなく、朝は同じ時間に起きるようにしましょう。
不眠症の種類②中途覚醒
中途覚醒とは、夜中に目が覚め、その後眠れなくなることを言い、高齢者に多い不眠症の症状とされています。
夜中に目が覚め、朝まで起きていると睡眠時間が短くなり、日中眠気を感じることが多いです。
中途覚醒について、以下の項目に分けて解説します。
- ・中途覚醒の原因
- ・中途覚醒の対策
中途覚醒の原因
中途覚醒の原因は、以下の通りです。
- ・病気によるもの
- ・加齢
- ・ストレス
- ・頻尿
病気には、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害、うつ病などが挙げられます。
それぞれについて以下の表にまとめたものを参照ください。
症状 | 原因 | |
---|---|---|
睡眠時無呼吸症候群 | ・就寝中の無呼吸や低呼吸 ・いびき ・息苦しさ | ・肥満 ・睡眠薬の服用 ・アルコール摂取後の睡眠 ・扁桃腺肥大やアデノイド |
周期性四肢運動障害 | ・足がむずむずする ・無意識に足が動く | ・鉄分不足 ・妊娠中 |
うつ病 | ・何をしても楽しめない ・不眠 ・食欲低下 ・意欲低下 | ・精神的ストレス(人間関係、ライフステージにおける環境の変化など) ・身体的ストレス(内科的な病気を治療するための薬の副作用) |
年齢を重ねると早起きしているイメージがあるでしょう。加齢によって眠りが浅くなり、中途覚醒が促されます。
また、以下のような場合は尿意を感じ、トイレが近くなることが中途覚醒の原因になっていると言えます。
- ・寝る前の過剰な水分やアルコール・カフェインの摂取
- ・利尿作用のある薬を服用している
- ・膀胱や前立腺などの機能的な問題
- ・トイレに行く回数が増えると、起きる回数も必然的に増えて、睡眠を妨げる
中途覚醒の対策
中途覚醒の対策は、以下の通りです。
- ・無理に寝ようとしない
- ・いびきや無呼吸、足のむずむず感がある場合は受診する
- ・寝室の環境を整える
- ・寝る前の過剰な水分摂取や、アルコール・カフェインは控える
加齢による中途覚醒は、日中の活動に影響がなければ深く考えすぎず様子を見ましょう。
夜中に起きて眠れなくなる以外に、家族からいびきを指摘されている場合や、足がむずむずしているなどの症状がある場合は、病気による中途覚醒の可能性もあるため医師に相談するのがおすすめです。
また薬の作用や膀胱の機能的な問題で尿意を催すことによる中途覚醒の場合は、医師に相談して薬の調整を検討してもみるのもよいでしょう。
不眠症の種類③早朝覚醒
早朝覚醒とは、起きる予定としていた時刻より早く目が覚めることを言い、高齢者やうつ病を患っている人によくみられると言われています。
起床時刻より2時間以上早く目が覚め、その後眠れない場合に早朝覚醒と判断されます。
早く起きたとしても、日中の活動に影響がなければよいですが、睡眠時間が短くなることで日中の眠気や倦怠感がある場合は、何かしらの対処が必要と言えるでしょう。
早朝覚醒について、以下の項目に分けて詳しく解説します。
- ・早朝覚醒の原因
- ・早朝覚醒の対策
早朝覚醒の原因
早朝覚醒の原因には、以下の4つが考えられます。
- ・加齢
- ・生活習慣の乱れ
- ・ストレス
- ・うつ病
加齢により、体内時計が前倒しされ、早朝覚醒が促されます。高齢者は、早寝早起きの人が多いのは、体内時計のズレによるものだと言えるでしょう。
また、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が減少しているのも、早朝覚醒の原因と言われています。
その他、運動不足や寝る前のアルコール・カフェインの摂取、起床時間がその日によって違うなどの生活習慣の乱れも影響しています。
ストレスを感じていると、交感神経が刺激されて深い眠りに入りにくくなります。
眠りが浅い時間が続くことで早朝覚醒につながっていると言えるでしょう。
うつ病は、メラトニンを作るホルモンであるセロトニンの分泌が減少することから、睡眠障害を起こしやすく、早朝覚醒もその一種です。
早朝覚醒の対策
早朝覚醒の対策は、原因を特定し状況に合わせて行いましょう。
上記に挙げた原因への対策として、以下を参照ください。
原因 | 対策 |
---|---|
加齢 | ・自然の摂理による早朝覚醒の場合が多いため、日常生活に影響がなければ様子を見てよい ・眠れないことで苦痛を感じている、昼間の眠気、倦怠感で悩んでいる場合は医師に相談する |
生活習慣の乱れ | ・寝る前にスマホは見ない ・朝起きたら太陽の光を浴びる ・起床時間を一定にする ・昼間運動を取りいれる |
ストレス | ・ストレスを溜めないよう、自分なりのストレス解消法やリラックス方法を探す ・寝る前のストレッチやアロマ、香を焚く、ゆったりした音楽を流すなど、リラックスできるとよい |
うつ病 | ・医師に相談し、うつ病の治療を開始する ・うつ病が改善することで、早朝覚醒も改善していくことが多い |
それぞれの原因により、できる対処方法が異なります。自分がなぜ早朝覚醒しているのか、原因を追究して対策方法を考えましょう。
不眠症の種類④熟眠障害
熟眠障害とは、深い眠りにつくことができず、倦怠感や頭痛などの症状が出ることを言います。
寝ているはずなのに疲れが取れないため、眠れていないことを自覚しにくいのが特徴です。
休日に睡眠時間を確保しようと、いつもより長く寝ようとする傾向があります。
熟眠障害は、レム睡眠やノンレム睡眠が影響しています。
- ・レム睡眠:眼球運動が見られ、脳が起きている状態の睡眠のこと。夢を見るのもレム睡眠中である
- ・ノンレム睡眠:深い眠りに入っており、脳も休んでいる状態
通常、レム睡眠とノンレム睡眠は90分サイクルで入れ替わり、朝が近付くとレム睡眠の時間が長くなることで自然に目覚めます。
しかし熟眠障害は、レム睡眠の時間が長くなり、熟睡した時間が短くなることで熟眠感が得られず、疲れが取れない、寝た気がしないという症状につながります。
熟眠障害について、以下の項目に分けて解説します。
- ・熟眠障害の原因
- ・熟眠障害の対策
熟眠障害の原因
熟眠障害の原因は、主に3つ挙げられます。
- ・加齢
- ・ストレス
- ・カフェインやアルコールの摂取
加齢とともに睡眠ホルモンである、メラトニンの分泌が減少することから、睡眠の質が落ちると言われています。
ストレスやカフェイン・アルコールの摂取は、交感神経を刺激していることから、脳の働きも活発になっており、熟睡できる状態ではないと言えます。
熟眠障害の対策
熟眠障害の場合の対策方法は、以下の通りです。
- ・朝起きたら日光を浴びる
- ・仮眠を控える
- ・日中身体を動かす
- ・寝る前のスマホやタブレットの使用をやめる
熟眠障害は、メラトニンの生成を促すことで改善できるでしょう。メラトニンは、日光を浴びてから14~16時間後に分泌が盛んになるという性質を持っています。
朝起きて日光を浴びることで、寝る頃にメラトニンの分泌を促せるため、熟眠障害を改善するのに重要と言えるでしょう。
メラトニンが分泌されても、スマホやタブレットを使用して交感神経を刺激しては、効果が減少してしまうため、寝る前の環境を調整することも重要です。
まとめ
自分は不眠症ではないか?と心配な人は、アテネ不眠尺度を利用するとセルフチェックできます。
数字に応じて【不眠症の心配はない】【可能性がある】【不眠症の可能性が高い】に分類されます。気になる人は、チェックしてみましょう。
不眠症にも症状に応じて、原因や対策が異なる場合があるため、自分の不眠症の症状について詳しく知ることで、できる対処法が見つかります。
日常生活に影響を及ぼすような不眠症は、早めの対策をして解消していきましょう。
よくある質問
Q.不眠症を自分で確認する方法はありますか?
A.アテネ不眠尺度という、WHOが作成したチェック表があります。不眠度が点数で表され、不眠症の度合いが確認できます。自身で不眠症の程度を確認し、場合によっては医師へ相談することをおすすめします。
Q.チェック表を使ってみたら、不眠度が高かったです。受診するべきでしょうか?
A.眠れないことで、昼間に眠くなる、倦怠感がある、集中力が続かないなど、日常生活に支障があれば早めの受診をおすすめします。
受診以外にも、日常生活の見直しで不眠症が改善する場合もあるため、不眠症の原因を追究してみて改善することも重要です。
参考文献
- 不眠症チェック | 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ|厚生労働省研究班監修
- 不眠症の4つの症状タイプについて。不眠症のチェックリストも合わせてご紹介 – あらたまこころのクリニック
- 睡眠障害は何科を受診する?治療内容や検査方法についても紹介
- 不眠症‐eヘルスネット厚生労働省
- 睡眠障害ガイドライン 我が国における睡眠問題の現状
- 入眠障害(不眠症)とは?原因や予防方法と対策を徹底解説
- 中途覚醒の原因を解説!夜中に目覚めないための対策も詳しく紹介 | 健達ねっと
- 途中で目が覚める理由を睡眠専門医が解説します | 阪野クリニック
- うつ病|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
- 朝早く目が覚める原因とは!?早朝覚醒の対策方法についてご紹介 | ネムリウム 西川株式会社
- 熟眠障害にご注意! | メディカルスリムはやし
- 今度こそ不眠症を解消するための対策法 – 心療内科・メンタルクリニック・精神科|神楽坂こころのクリニック