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【寝れてる?】分割睡眠のメリットとデメリットについて

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睡眠Dr. 編集部

睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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睡眠不足の方必見!分割睡眠とは?

ベッドで休んでいる様子を描いたイラスト
一般的に睡眠時間は1日7-8時間取るべきであると言われていますが、実際にはそこまでの睡眠時間を確保できている人は多くありません。
特に働いている世代では睡眠時間が短い傾向にあり40-50代の日本人の平均睡眠時間は約6時間と言われており、諸外国の有職者と比較しても圧倒的に少ない睡眠時間しか確保できていないことが分かります。

そこで、最近では1日の睡眠を複数回に分けて取る分割睡眠という睡眠方法が非常に注目されています。
タイムシフト制の勤務や夜勤など、働き方に多様性がある現代だからこそ、まとまった睡眠時間を確保できない人が増えています。
そんな中、睡眠を分割して取ることで十分な睡眠時間を確保しようと考える人が増えているのです。
また睡眠を分割して取ることで、普通の睡眠よりも睡眠の質が向上するため総睡眠時間を短縮できると考えている人もいるようです。

しかし、果たして分割睡眠は本当に健康上安全な睡眠方法なのか、睡眠の質が上がるのか、色々と不安な方も少なくないと思います。

そこで、今回の記事では分割睡眠について詳しく解説し、メリットやデメリット、実際の実践方法などもご紹介します。

分割睡眠ってどんな睡眠?

総睡眠時間を短くする目的や、睡眠の質を向上させる目的で1日の睡眠を複数回に分割する睡眠方法を分割睡眠と言い、別名で多相性睡眠とも呼ばれます。

その反対に、私たちが一般的に行っている睡眠方法は単相性睡眠と呼ばれ、1日の睡眠をまとめて取る方法です。
おそらく、多くの人が単相性睡眠を取っている中で、多相性睡眠を取っている人が異端に思われてしまいがちですが、実はそうでもありません。

興味深いことに、元々我々人類は1日に何回も睡眠を取る多相性睡眠が基本サイクルだったそうです。
猫や犬と同様、人間も自由気ままに睡眠をとっていた時代があったそうですが、文明とともに日中の労働、夜間の睡眠が世界的な常識となってしまい、その結果、現在の単相性睡眠が一般化してしまったと言われています。

そこで多くの人が気になるのは、単相性睡眠と多相性睡眠のどちらがより良い睡眠になるのかだと思います。
これらを評価するためには、より良い睡眠を得るためのいくつかのポイントを理解しておきましょう。
では、具体的に解説していきます。

総睡眠時間

より良い睡眠を得るためには、適切な総睡眠時間の確保が必須となります。
総睡眠時間があまりにも短い場合は、単相性睡眠であっても多相性睡眠であっても、健康に悪影響が及ぶとされているからです。

具体的に、睡眠時間が7時間未満では7時間以上の人と比較して高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発症リスクが高まり、5時間以下では脳・心臓疾患の発症率が上昇、さらに4時間以下では冠動脈性心疾患による死亡率が2倍になるなどの報告もあり、明らかに健康被害のリスクが増加してしまいます。

とは言え、睡眠時間が長すぎても心疾患やうつ病の発症率が増加してしまうという報告も。
もちろん、適切な総睡眠時間には個人差がありますが、概ね7-8時間の総睡眠時間を確保することが理想的であると考えられます。

睡眠周期

より良い睡眠を得るためには、睡眠周期への理解も必要です。

人間の睡眠には浅い睡眠相であるレム睡眠と、深い睡眠相であるノンレム睡眠の2つがあり、これらが約90分おきに交互に入れ替わると言われています。
レム睡眠は肉体を、ノンレム睡眠は脳を休めるための睡眠相であると考えらえています。

以上のことから、深い睡眠相であるノンレム睡眠の時に起きてしまうよりも、浅い睡眠相であるレム睡眠の時に起きた方がすっきりと目覚められるため、90分の倍数で総睡眠時間を確保したほうがいいのでは?とこれまで考えられてきました。
確かにこれは正論なのですが、実際には科学的な証明はなされておらず、人によって睡眠相の時間も異なるため計算して目覚ましをかけるのは現実的とは言えません。

単相性睡眠でも多相性睡眠でも90分という間隔にこだわらず、それぞれにあった睡眠時間を確保することの方が重要です。
レム睡眠についてはコチラの記事でも解説しているので是非参考にしてみてください。

睡眠の質

より良い睡眠を得るためには、睡眠の質を理解しておくことも重要です。

人間は睡眠から3時間が経過した頃に成長ホルモンの分泌量が最大になると言われています。
そのため、3時間以上継続した睡眠をとれば十分な成長ホルモンの分泌を得ることができ、睡眠の質を向上させてくれるのです。

逆に言えば、多相性睡眠であまりにも短い睡眠を取る、もしくは単相性睡眠で長い時間の寝溜めをしても睡眠の質が低くなってしまいます。

以上のことから、より良い睡眠を得るためにどちらの睡眠法であってもある程度の総睡眠時間を確保し、それぞれの身体に見合った適切な睡眠間隔を取ることが重要です。
では、実際に分割睡眠を行った場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

分割睡眠のメリット

結論から言えば、分割睡眠は夜勤などでまとまった睡眠時間を確保できない人にはメリットがあります。

厳密に言えば、分割睡眠と単相性睡眠を比較する研究がこれまであまり行われていなかった背景があるため、分割睡眠の明確なメリットは報告されていないのが現状です。

メリットが明確化されていない以上、あえて単相性睡眠から分割睡眠に切り替える理由はないということになってしまいますが、分割睡眠を検討する余地があるケースもあります。
それは、夜勤帯で働く人やシフト制の勤務でまとまった睡眠時間を確保できない上に、本来就寝している時間にも働く必要がある場合です。

夜勤中一切睡眠を取らずに、帰宅してからまとまった睡眠を取ると、太陽光を浴びる時間が極端に減り、ホルモンバランスが崩れてしまうため、様々な健康上のリスクが生じてしまいます。
分割睡眠であれ単相生睡眠であれ、睡眠の質を保つためには総睡眠時間を同程度確保することが重要です。
夜勤中に2時間でも仮眠を取れれば、夜勤中や夜勤後の疲労感が軽減でき、さらに夜勤後の日中の睡眠時間を短縮することもできます。

つまり、夜勤がある方であれば分割睡眠にもメリットがあるということになります。

分割睡眠のデメリット

結論から言えば、分割睡眠のデメリットは睡眠時間が短くなってしまう可能性が高くなることです。

そもそも分割睡眠は、まとまった睡眠時間を確保できない人や総睡眠時間を短縮したいと考えている人が行ってきた睡眠方法です。
単相性睡眠と比較して、総睡眠時間が短くなる可能性があります。

仮に総睡眠時間が短くなってしまうと死亡率が高まるという報告もあり、具体的には7時間睡眠に比べて5時間睡眠だと死亡率は約1.2倍、4時間未満だと約1.6倍にもなるそうです。
また、6時間睡眠を2週間継続しただけでまる2日間徹夜したのと同程度まで脳の反応速度が低下するという報告もあり、睡眠時間がいかに身体や脳に影響するか、分かるかと思います。

以上のことからも、分割睡眠を行う際は総睡眠時間を短縮するのではなく、あくまで確保した上で実践すべきだと思います。
では、これまで分割睡眠を行ってきた人たちは具体的にどのように実践してきたのでしょうか?

分割睡眠の実践法を紹介!

三日月の上で寝ているひつじのイラスト

分割睡眠は睡眠を複数回に分割して取る方法であり、実践している人たちの方法を具体的に解説していきます。

スペイン式分割睡眠

スペイン式分割睡眠とは、夜の長い睡眠と一回の昼寝で構成された分割睡眠です。

スペインでは、午後の眠気を合理的に解消する手段として、昼食後に20分ほど昼寝をするのが習慣であり、その方法を実際に取り入れている人も増えているようです。
オーストラリアで行われた研究によれば、たった10分間の昼寝をしただけでも認知能力や疲労度合いなどが改善されたそうです。

しかし、20分以上昼寝した場合は、認知能力が機能しはじめるまでの時間が長くなってしまったと言われています。

以上のことからも、スペイン式分割睡眠を実践するのであれば昼食後に10分程度の仮眠をとることをおすすめします。

海軍式分割睡眠

海軍式分割睡眠とは、4時間睡眠した後に8時間の睡眠を繰り返す睡眠法です。

海軍が実践している睡眠方法であり、実際にこのように定期的かつこまめに睡眠を取り入れることで作業効率が向上するという研究結果も得られています。

しかし、海軍式分割睡眠の場合は生活リズムが睡眠間隔に支配されてしまいます。
それこそ海軍なら実践可能かもしれませんが、社会生活を営む人にとってはなかなか実践困難な睡眠方法であることは留意すべきです。

そのほかの分割睡眠

そのほかの分割睡眠として、「Everyman sleep」や「Uberman sleep」、「Dymaxion Sleep」などが挙げられます。

「Everyman sleep」とは、3時間半のまとまった睡眠と20分間の仮眠1日3回で構成された睡眠法です。
総睡眠時間は4時間半と短いですが、睡眠の質はある程度保たれ一定の効果を示したそうです。

それに対し、「Uberman sleep」は20分間の仮眠を1日6回行う睡眠法です。
総睡眠時間はわずか2時間であり、明らかに疲労が蓄積してしまう睡眠法であるため、継続的には実行不可能な睡眠法と言えます。

また「Dymaxion Sleep」はさらに過酷で、30分間の仮眠を1日4回行う睡眠法です。
総睡眠時間は「Uberman sleep」と同様の2時間ですが、実践した人によれば最も過酷な睡眠法と評されるほどです。

以上のことからも、分割睡眠を実践するのであれば総睡眠時間を7時間ほど確保し、社会活動に影響の出ない範囲で分割する必要がありそうです。

短時間の睡眠についてはコチラの記事でも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

睡眠不足の解消法

眠れないまま朝を迎えた男性のイラスト
睡眠不足に悩む多くの日本人にとって、分割睡眠は1つの解決策になる可能性があります。
しかし、ここまで解説してきた通り、単相性睡眠からあえて分割睡眠に移行するメリットは明確になっていません。
さらに言えば、分割睡眠よりももっとお手軽に、かつ効果的に睡眠不足を解消する方法があります。

生活習慣を見直す

生活習慣の改善は睡眠の質を改善させる上で非常に効果的です。
これは、生活習慣と睡眠の質には強い関係性があるからです。

具体的には、就寝前の暴飲暴食やアルコール、カフェインの摂取を控え、眠る前に体温が上がるような温かい飲み物を飲むことです。

就寝前の食事摂取やアルコールは睡眠の質を低下させる原因となり、就寝前に体温を上げることで心地よい睡眠を得られるようになります。
実は体温と睡眠には強い関係性があり、下記記事では詳しく解説されていますのでぜひ参考にしてください。

睡眠環境を整える

睡眠の質を改善させるには、睡眠環境を整えることも重要です。

例えば、部屋の電気を消し忘れて寝てしまう、ソファやコタツで寝てしまう、などの場合起床時の倦怠感を感じたことがある人も多いと思います。

それだけ睡眠環境はダイレクトに睡眠の質に影響するのです。
睡眠環境を整えるためには、就寝前のスマホいじりを控える、寝室の温度や湿度を適切に整える、自分にあった寝具を使用するなどの方法が挙げられます。

リラックスできる環境は人によっても異なるため、ご自身に見合った睡眠環境を作り出すことが重要です。

早起きする

早起きは三文の徳と言いますが、これは医学的にも事実です。

早起きをして太陽光を浴びる時間が長くなると、日中にセロトニンと呼ばれるホルモンがたくさん分泌されます。
このセロトニンが原料となり。夜間になるとメラトニンと呼ばれるホルモンが分泌されます。
このメラトニンは睡眠ホルモンと呼ばれ、自然な眠気を作り出してくれます。

以上のことからも、早起きして太陽光を浴びることが睡眠の質を向上させてくれるのです。

鼻呼吸する

睡眠中の鼻呼吸は睡眠の質を改善させてくれます。

睡眠中に鼻から吸った空気は鼻腔で加湿され、小さなゴミも回収されるため綺麗な空気を吸い込むことが可能です。
口呼吸の場合は鼻腔を経由しない空気が流入するため、乾燥した汚い空気を吸い込んでしまいます。

さらに、口呼吸では舌根が後方に落ちやすく、気道が狭くなりやすいため睡眠の質にも影響が出てしまうことが分かっています。

以上のことから睡眠中は口呼吸より鼻呼吸を行うべきであり、最近では鼻呼吸を促すための口閉じテープも市販されています。
下記の記事では睡眠の質を改善させる口閉じテープについて詳しく解説されていますのでぜひ参考にしてみてください。

自分にあった睡眠法を見つける

質の高い睡眠を得るためには、結局のところ自分に合った睡眠法を見つけるために色々と試す必要があります。

記事やメディアで様々な快眠法が紹介されていますが、実際には個々によって合うかどうか異なるからです。
中には、単相生睡眠よりも分割睡眠の方が体の相性に合っている方もいるかもしれません。

様々な睡眠方法を試す上で、総睡眠時間を確保することだけは忘れないようにしてください。

まとめ

すっきりとした目覚めの様子を描いたイラスト
今回の記事では分割睡眠のメリットやデメリットについて詳しく解説させていただきました。

分割睡眠におけるメリットは明確化されていませんが、夜勤などによってまとまった睡眠時間を確保できない方にとっては検討の余地があるのではないでしょうか?

いかなる睡眠方法であれ、良質な睡眠を得るためには総睡眠時間はしっかりと確保することが重要です。
その上で分割睡眠に興味がある方がいれば、是非今回の記事の内容を参考にしていただけると幸いです。

よくある質問

Q.分割睡眠の健康上のデメリットは?

A.総睡眠時間を短縮する目的での分割睡眠の場合、睡眠時間の短縮によって高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発症リスクが増加してしまいます。
具体的に、睡眠時間が5時間以下では脳・心臓疾患の発症率が上昇し、4時間以下では冠動脈性心疾患による死亡率が2倍になるなどの報告もあります。

Q.夜勤中に睡眠を分割して取るのは良いこと?

A.夜勤中に2時間ほど仮眠を取る分割睡眠はメリットが大きいと考えられます。
具体的には、夜勤中の仮眠によって夜勤中や夜勤後の身体への負担が軽減される可能性があります。
また、夜勤から帰宅後の日中の睡眠時間を減らすこともできるため。 生活リズムが大きく崩れることもありません。

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睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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