睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因とは?
睡眠時無呼吸症候群の原因は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群で異なっています。それぞれの原因についてご説明します。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の原因とは?
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因は、睡眠時に空気の通り道である気道が狭くなることです。そのため気道を狭くさせてしまうことにつながることは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクとなります。以下は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因になるといわれているものです。
肥満
肥満になると首の周りに脂肪がつき、上気道を圧迫してしまうため閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因となります。軽症なら、ダイエットをするだけで閉塞性睡眠時無呼吸症候群の症状が改善する可能性があります。食生活を見直して、有酸素運動をする習慣を身につけましょう。
顎が小さい
顎が小さいと気道が狭くなってしまうため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高くなります。上の顎が小さいと、軟口蓋の後ろの気道が狭くなり、下あごが小さいと舌の後方部分の気道が狭くなってしまいます。
特に、日本人は欧米人に比べると骨格的に顎が小さいため、肥満でない人でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群になっている方が多いです。
顎が小さいことが原因で閉塞性睡眠時無呼吸症候群を発症している人は、就寝時にマウスピースで顎の位置を調整したり、外科手術で顎を前方に移動させたりする治療が行われています。
気道が狭い
気道の閉塞はさまざまなことが要因となり起こりますが、中には生まれつき気道の幅が狭い人もいます。生まれつき気道の幅が狭い人は、普通の人に比べると閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高いため、より一層注意が必要です。
また、生まれつき舌が大きい人も、睡眠時に舌根沈下して気道を狭くしてしまうため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高いのです。
舌根沈下についてはコチラの記事でも紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
扁桃肥大
子供の閉塞性睡眠時無呼吸症候群で多く見られるのが、扁桃肥大(口蓋扁桃)やアデノイド肥大(咽頭扁桃)です。
咽頭扁桃は3歳頃から大きくなり、7歳頃ピークとなりそのあと徐々に小さくなります。アデノイドは、2歳頃から大きくなり始め、6歳頃でピークとなりそのあと徐々に小さくなっていきます。扁桃肥大もアデノイド肥大も気道閉塞の原因となるため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高いです。
扁桃肥大やアデノイド肥大が原因で閉塞性睡眠時無呼吸症候群が発症した場合は、外科手術で取り除き症状を改善させることがあります。
腎不全
慢性腎臓病は、睡眠時無呼吸症候群を合併することが知られています。
腎臓病患者は、日中は体液が足に溜まり浮腫んでいます。しかし、睡眠時は体を横にしているため、足に溜まっていた体液が上半身に移動してしまうのです。気道周囲の組織に溜まり浮腫みを起こして、気道を圧迫し狭窄してしまうため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高まります。
そのため、慢性腎臓病患者は塩分制限や利尿剤の服用などで体液管理を行い、睡眠時無呼吸症候群が起こらないようにすることが大切です。しかし、体液管理だけでは睡眠時無呼吸症候群の症状が改善しないという場合は、CPAP療法などで気道を広げる治療が行われます。
内分泌障害
内分泌障害の中には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の原因になるものがあると考えられています。
甲状腺機能低下症
甲状腺は、喉仏の周囲にある甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。
甲状腺機能低下症になると、体重の増加や舌の肥大、気道粘膜の浮腫み、気道周囲の筋肉の緊張低下などによって気道が閉塞されることがあります。また、甲状腺ホルモンの分泌量が低下すると、呼吸中枢からの呼吸シグナルが低下してしまうので、中枢性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクも高くなるといわれています。
末端肥大症
末端肥大症は、成長ホルモンの過剰分泌により手足が肥大したり、額や顎が突出したり、舌や唇が大きくなったりする病気です。
末端肥大症は、心不全や狭心症などの合併症を引き起こすことがありますが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群も合併症のひとつです。
末端肥大症を発症し、舌が大きくなり軟口蓋が厚くなると気道の閉塞を引き起こします。そのため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高くなってしまうのです。
鼻詰まり
鼻が詰まっていると、鼻から効率良く酸素を取り込めなくなるため、口で呼吸をするようになります。口呼吸になると舌が後方に落ち込み気道が狭くなるため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高まります。また、鼻が詰まっていると睡眠時無呼吸症候群の治療法のひとつであるCPAP療法が受けることが難しくなるため、治療を始める前に鼻詰まりの治療を行うことがあります。
ここでは、鼻詰まりの代表的な疾患であるアレルギー性鼻炎と慢性副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症をご紹介します。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニなどの特定の物質(アレルゲン)を異物とみなし、体内から排除しようと免疫機能が過剰に反応して、鼻水やくしゃみなどの症状があらわれる病気です。
アレルギー性鼻炎は、一年中症状があらわれる通年性と、決まった季節にだけ症状があらわれる季節性があります。
アレルギー反応を抑える薬として、抗アレルギー薬や抗ロイコトリエン薬、ステロイド薬が使われています。
慢性副鼻腔炎
副鼻腔炎は、鼻腔の奥にある副鼻腔に炎症が広がることで発症する病気です。慢性副鼻腔炎は、副鼻腔炎の症状が3ヶ月以上続く場合を意味します。
症状は、鼻詰まりや嗅覚の低下、後鼻漏、黄色の鼻汁などです。
一般的には抗菌薬で内服治療を行いますが、必要に応じて抗アレルギー薬やステロイドなどを使用することもあります。
内服治療で改善がみられない場合は、鼻腔内のポリープを切除して副鼻腔内の膿を洗い流し、副鼻腔にある骨壁を除去することで副鼻腔の換気を改善させます。
鼻中隔弯曲症
鼻中隔弯曲症とは、左右の鼻の穴を隔てている鼻中隔が曲がってしまっているために、鼻詰まりやいびきなどの症状があらわれる病気です。鼻中隔が曲がっていても症状があらわれない人も多く、それだけでは鼻中隔弯曲症とは診断されません。
鼻中隔が曲がってしまう原因は、成長過程で軟骨が曲がってしまうことや、打撲や外傷などで曲がってしまうこともあります。
慢性的な鼻詰まりから鼻の粘膜が炎症を起こし、副鼻腔炎が発症することがあります。
鼻中隔弯曲症の治療は、鼻中隔の弯曲を切除してまっすぐに整える手術です。
年齢
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症は、年齢と関係があることが知られています。
ここでは男女別の好発年齢とその理由をご紹介します。
男性は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群をよく発症するのは40~60代です。この年代の男性が仕事で多忙となり定期的な運動をする時間がとれなくなったり、取引先との会食で太りやすい食生活を送っていたりするためといわれています。また、若い時に比べると気道周りの筋肉が衰えて、気道が狭くなってしまうことも関係していると考えられています。
一方女性に閉塞性無呼吸症候群がよくみられるようになるのは閉経後です。これは、気道を広げる働きがある女性ホルモンの分泌量が、閉経によって減少したためです。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の原因とは?
中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因は、呼吸中枢の異常で呼吸がしにくくなることです。しかし、呼吸中枢の異常が起こる原因は、まだはっきりとわかっていません。
脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患の後遺症や、心不全や心筋梗塞などの心臓疾患が、中枢性睡眠時無呼吸症候群の発症と関係しているといわれています。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因は、物理的に気道が塞がるのではなく、呼吸中枢の異常で呼吸指令が上手く伝わらないため、呼吸が止まります。
心不全
慢性心不全に合併する睡眠時無呼吸症候群のうち、約4割が中枢性であるという報告があります。睡眠中は、覚醒時に比べると呼吸中枢の二酸化炭素に対する感受性は鈍くなっているため、中枢性睡眠時無呼吸症候群が発症しやすくなっています。
さらに、心不全で血液の循環が悪くなり、動脈血中の二酸化炭素飽和度を呼吸中枢に伝えるのが遅くなるため、中枢性睡眠時無呼吸症候群が発症しやすくなるのです。
無呼吸により血中酸素飽和度が低くなると、酸素を取り入れようと活発に心臓が動き出すため、弱っている心臓に負担をかけ心不全を悪化させたり、不整脈を引き起こしたりするのです。
脳卒中
脳梗塞や脳出血により呼吸中枢が障害されると、呼吸運動の指令に支障をきたし、中枢性睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。
また、睡眠時無呼吸症候群は、脳卒中を合併することが知られています。睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や動脈硬化を合併するため、脳卒中の発症リスクが高くなってしまうのです。
変性疾患
変性疾患は、細胞の変性の結果発症する疾患のことです。変性疾患の中には、中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因になると知られている疾患があります。
筋緊張性ジストロフィー症
筋緊張性ジストロフィーは筋ジストロフィーの一種で、徐々に筋力が低下していく病気です。主な症状は筋の強直と委縮で、呼吸筋の低下や呼吸中枢の障害を起こしやすく、中枢性睡眠時無呼吸症候群を合併することで知られています。
脊髄小脳変性症・多系統萎縮症
脊髄小脳変性症は、小脳や脊髄の神経細胞の変性・消失・萎縮により、呂律がまわらない、ふらつく、手が震えるなどの症状があらわれる病気の総称です。脊髄小脳変性症の中の多系統萎縮症は、中枢性睡眠時無呼吸症候群を合併する病気といわれています。
ストレス
ストレスなどが原因で呼吸中枢が正常に働かなくなり、中枢性睡眠時無呼吸症候群を発症することがあると考えられています。
また、ストレスがかかると自律神経が乱れ呼吸が浅くなり、脳に必要な酸素が運ばれなくなってしまいます。そのため、多くの酸素が取り込める口呼吸をするようになってしまうのです。口呼吸をすると舌が後方に落ち込み気道の狭窄を招くため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクが高くなってしまいます。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群の原因をご紹介しました。さまざまなことが睡眠時無呼吸症候群の原因となりますが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群で原因は異なります。
深刻な病気を合併する可能性があるため、出来るだけ早く治療を始めるべきですが、原因がわからないと対策が立てられません。そのため、医療機関で検査を受けましょう。
よくある質問
Q.肥満でない人でも睡眠時無呼吸症候群になりますか?
A.睡眠時無呼吸症候群は、肥満でない人でもなります。
確かに閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、肥満である人がなりやすい傾向がありますが、痩せていても顎が小さい人や扁桃腺肥大の人などにも認められます。日本人は欧米人に比べると骨格的に顎が小さいため、肥満でない人でも睡眠時無呼吸症候群を発症している方は多いです。
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、呼吸中枢の異常が原因であるため、肥満でない方でも脳梗塞や心筋梗塞を発症したことがある人は注意が必要です。
Q.年齢と睡眠時無呼吸症候群は関係がありますか?
A.睡眠時無呼吸症候群は年齢と関係があると考えられています。
男性では40~60代、女性では閉経後に多く見られる傾向があります。
この時期の男性は、仕事で多忙になり運動不足や生活習慣病が発症しやすい年代です。首周りに脂肪がつき、気道が圧迫され閉塞するため、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなります。また、首周りの筋肉が衰えてくる年代であることも、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高くなる原因と考えられます。
閉経後の女性は、上気道を広げる働きがある女性ホルモンの分泌量が閉経によって減少するため、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高くなります。