低体温とは?なぜ眠くなる?
低体温症とは、生命維持をするための脳や心臓、肺といった器官の温度(深部体温)が35℃を下回った状態のことです。
通常、人間の体温は36~37℃で維持されています。しかし環境や体調によって、体温が35℃台まで下がる場合があります。単純に体温が35℃台に下がるだけでは、低体温症とはいいません。あくまでも深部体温が35℃以下の状態を指します。
低体温症は、体温によって重症度が区分されています。
深部体温が32~35℃の場合は軽症、28~32℃では中等症、20~28℃では重症です。低体温症は、自覚ないまま進行するケースもあり、最悪の場合は死に至ることもあります。また、低体温症で眠るとさらに体温が下がるので、眠らないように気を付けさせる必要があります。周囲の人は声を掛け続けて、眠らせないようにしなくてはいけません。
そもそもなぜ、低体温症になると眠くなるのでしょうか。
低体温症と眠気には、代謝量の低下が関係しています。人間の身体には、表面と体内に温度を測る神経が張り巡らされています。神経は外気温の情報を、脳の視床下部に伝達。体温を適切に調整するよう、指令が送られます。これが、寒い冬や暑い夏でも、環境に合わせて体温を調整できる秘密です。
体温が下がると、体内の代謝活動が低下します。エネルギーの消費を最小限に抑え、生命の維持を優先しようとするからです。活動量が低下すれば、眠気が増すのは当然の結果といえるでしょう。
また普段から低体温の人は、夜間の睡眠の質が低下しています。体温が下がると体内時計が乱れ、睡眠リズムに影響を及ぼす可能性があるからです。
「常に眠い」「寝ても寝ても眠い」このように感じている人は、平常時の体温が低くないか調べてみましょう。
低体温症の症状
低体温症になった場合は、早急な治療が求められます。低体温症は、生命の危機を及ぼすほど重症になるリスクがあるからです。ここでは低体温症のおもな症状について、詳しく紹介します。
ちなみに、低体温に似た症状に「冷え症」がありますが、冷え症の人が必ずしも低体温症とは限りません。冷え症は、手や足などの末端部分が冷たくなっているものの、身体の中心部の温度は正常です。
意識低下
低体温症を疑う際には、まず意識レベルを確認しましょう。意識レベルの低下とは、以下のような状態を指します。
- ・ボーッとしている
- ・ふらつく
- ・意識がもうろうとしている
- ・周囲の呼びかけに反応しない
- ・意識がなくなる
低体温症の進行によって体内の代謝活動が鈍化すると、脳への酸素供給が減少します。徐々に意識がもうろうとし始め、やがて昏睡状態になる可能性もあるでしょう。意識低下のスピードは個人差があるものの、急激に進むケースもあるため、注意が必要です。
血行不良
低体温症になると体は体温を保つため、血液を末梢部から内臓へ集中させる傾向があります。体内の生命維持活動を優先するためです。
このため皮膚や末梢部の血行が悪化し、冷たさやしびれ、皮膚色の変化を感じることがあります。手足の冷たさや皮膚の青白さは、低体温症の典型的な症状です。手や足の指先を確認し、紫や白などの色で血色不良が確認できたら、低体温症を疑いましょう。
低体温症になっている場合は、早急な対応が必要です。地面に毛布やダンボールを敷き、なるべく厚着します。水分や栄養分の補給も、低体温症の進行を抑える方法として有効です。できれば温かいスープやドリンクなどで、内側からも温めてあげましょう。
筋肉の震え
体温が低下すると筋肉が収縮し、体温を上昇させようとする反射的な動きが現れます。これを「シバリング」と呼びます。
シバリングは、筋肉を動かして熱量を生み出そうとする自然な反応です。体温の低下を感じた体内センサーは、神経系に信号を送ります。信号を受診すると、神経系は筋肉の収縮を起こすよう指令を出します。指令により、身体の中心部や抹消部の筋肉が収縮し、筋肉が収縮するというわけです。
ただし長時間筋肉の震えが続くと、筋肉疲労や体力の低下を引き起こします。さらに低体温症が進行すると、筋肉は震えなくなります。震えがおさまったからといって、安心するのは危険です。むしろ深刻な状態であると、認識しましょう。
低体温になる原因は?
くり返しになりますが、低体温症は日常生活下でも発生します。過酷な状況でないのに低体温症になるおもな原因は、生活習慣の乱れです。思い当たる節のある方は、生活習慣を改善し適切な体温まで上昇させましょう。
筋肉量の減少
筋肉は、エネルギーの消費が多い組織です。筋肉活動時は多くの熱を生産し、体温を一定に保つために貢献しています。筋肉が減少するとエネルギーの代謝も低下するため、体温調整に必要な熱が生産されません。運動不足や加齢により、筋肉量が減少している自覚のある人は、スクワットやウォーキングなどで筋肉を鍛えましょう。
さらに、筋肉は血液循環にも大きな影響を及ぼしています。筋肉は、収縮時に血液を全身に送り出しています。筋肉量が減少すると血流が鈍り、末端部への血液供給も減少。手足が冷たくなり、血行不良を感じさせるでしょう。つまり、筋肉量が減少すると、エネルギーの消費が減少し体温調節が難しくなります。筋肉量の低下は、低体温症のリスクが増加します。適度な運動やバランスの整った食事で、筋肉量の増量や維持を心がけましょう。
過度なダイエット
若い世代の女性に多いのが、過度なダイエットによる低体温です。ダイエットが低体温に影響を与えるおもなメカニズムは、次の4つです。
- ・栄養不足によるエネルギーの低下
- ・身体機能の低下
- ・ホルモンバランスの変化
- ・神経系への影響
過度なダイエットでは、食事摂取量が大幅に制限されるためエネルギー不足が生じます。これにより代謝が低下し、体温調整がうまく機能せず低体温症のリスクが高まります。また栄養不足で筋肉量が減少すると、熱生産や血液循環がうまく機能しません。極端な食事制限は、筋肉を維持できない可能性があるといえるでしょう。
過度なダイエットは、ホルモンバランスにも影響を与えます。特に甲状腺ホルモンの分泌が減少するため、代謝が悪くなり、体温調整が困難になります。
さらに、ダイエットによるストレスは神経系にも影響を与えるため、悪循環です。ダイエットをおこなう際は、過度な食事制限に気を付け、必要な栄養素を接種できるように計画しましょう。体温が上がれば代謝も上がるため、太りにくい身体に変化します。新陳代謝が活発になり、細胞も若々しくなるでしょう。肌や髪のツヤが良くなるため、美容面でも大きな成果を感じられます。
ストレス
過剰なストレスがかかると、自律神経が乱れます。自律神経は体温調整機能に関係しているため、低体温になりやすい身体になっていきます。またストレスは不眠症の原因です。十分な睡眠が取れない日が続くと、疲れやすくだるさが抜けにくくなっていきます。ストレスを完全に排除することは困難ですが、上手に発散しため込まないようにしましょう。
ストレス解消法のおすすめは、バスタイムの活用。シャワーだけで簡単に済ませている人は、湯船に浸かってリラックスタイムを満喫しましょう。湯船には、ストレス解消と体温を上げる2つの効果があります。寝る前に深層体温を上げておくと、スムーズな入眠が期待できますよ。
不眠症とストレスの関係についてはコチラの記事でも解説していますので是非チェックしてみてください。
低体温による悪影響
低体温は、身体にさまざまな影響を及ぼします。「寝ても疲れが取れない」「なんとなく体調が優れない」などの悩みがある方は、低体温を疑ってみましょう。
低体温のおもな症状は、以下の通りです。
- ・肩コリ/首コリ
- ・頭痛
- ・むくみ
- ・疲労感
- ・不眠
- ・免疫力の低下
- ・消化器官の機能低下
- ・月経不順、PMS、子宮内膜症などの女性特有の不調
- ・心臓や脳の血管障害
低体温で血行が悪くなると、肩や首に老廃物が溜まり痛みやコリを感じやすくなります。肩コリがひどくなると、頭痛につながるケースもあるでしょう。また、免疫力が低下するため、さまざまな病気の感染リスクも高まります。低体温の人が、風邪をひきやすいといわれる理由はこのためです。
消化器官の機能低下により、便秘や下痢を起こしやすくなったり、女性特有の病気を発生したりする可能性もあります。
低体温を予防する方法
低体温による体調不良を感じている方は、身体を冷やさないような工夫を継続してみましょう。
室内でも衣服の調整で防寒対策をして、適切に暖房を使用します。「首」がつく部位を温めると、身体全体の冷えを防げます。首にはタートルネックの衣類やマフラー、足首にはレッグウォーマー、手首にはアームウォーマーなどがおすすめです。
内蔵の冷えにも気を付けましょう。腹巻を着用したり、カイロで温めたりして、寒さからガードします。
冷たい飲み物は避け、温かい食事や飲み物を積極的に摂りましょう。ショウガやニンニクは、身体を温めてくれる便利な食材です。薬味や味付けのアクセントとして万能な食材なので、是非毎日の料理に取り入れてみてください。
また、適度な運動を毎日のルーティンにして、熱量の生産に必要な筋肉を付けましょう。運動はストレス解消にも有効です。
まとめ
低体温症になるとエネルギー生産が減少し、代謝活動が鈍くなります。無駄なエネルギーを使わないよう、身体が指令を出すため、眠気が現れやすくなるでしょう。さらに、低体温症は脳への酸素供給を減少させる可能性があり、意識レベルの低下につながります。眠ってしまうとさらに体温が下がるため、眠らないようにする努力が不可欠です。
低体温症の発生は、過酷な環境下だけで起こるものではありません。過度なダイエットや加齢による筋肉量の低下も、低体温症の原因のひとつです。
A.過度なダイエットで皮下脂肪や筋肉量が低下すると、熱量を生み出しにくい身体になってしまいます。ストレスを抱えすぎた場合にも、自律神経の乱れから低体温になるリスクが高まるため、うまくストレスを解消しましょう。体温と睡眠の関係性については「【深部体温が重要?】体温と睡眠の質について」にて解説しています。
A.眠るとますます体温が下がってしまうからです。周囲の人は常に話しかけ、低体温の患者が眠ってしまわないようにしましょう。
日常生活でも低体温症になるリスクが高まるため、生活習慣の改善が求められます。適度な運動で筋肉を付けたり、バランスの良い食事で栄養素を取り入れたりと、できることからはじめましょう。
よくある質問
Q.日常生活下で低体温になる原因とは?
Q.低体温のときに眠ってはいけない理由は?