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【寝るのが怖い】睡眠恐怖症の克服方法と対策

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玉木 いずみ

医療系大学を卒業後、臨床検査技師の資格を取得。総合病院に就職し、臨床検査部にて主に検体検査を担当。その傍ら、独学で心理カウンセラーの資格を取得。現在はこれまでの経験を活かし、ライターとして医療系や心理系を中心に多くの記事を執筆中。「専門的な内容でもわかりやすく、そして正しく執筆する」ことがモットー。

  1. 【見たい夢を見る方法】夢は思い通りにコントロールできるのか

  2. 寝相から分かる深層心理・性格についてご紹介

  3. 【怖い夢ばかり見てしまう】悪夢の原因と対処法について解説

睡眠恐怖症って何?

落ち込んでいる女性

まずは、睡眠恐怖症とはどのような疾患なのか解説していきます。

睡眠恐怖症とは

睡眠恐怖症とは、その名の通り睡眠に対して過剰な恐怖心を抱くようになった状態で、恐眠症や寝台恐怖症、不眠恐怖と呼ばれることもあります。

主な症状は、次の通りです。

  • ・呼吸が速くなり、息苦しくなる
  • ・錯乱
  • ・発汗
  • ・パニック
  • ・恐怖、不安
  • ・口の渇き
  • ・体にふるえが起こる など

上記に加えて、睡眠のことを話したり考えたりするだけで不安を覚える患者もいるといわれています。

ですが、実のところ睡眠恐怖症についてよくわかっていない部分も多いのです。一部では、精神疾患である不安障害のひとつではないかという考えもありますが、これも医学的な確証は得られていません。ゆえに、今後さらなる研究が期待されます。




どうして寝るのが怖くなるの?

暗い部屋の中で悩みこんでいる女性

まだ曖昧な部分も多い睡眠恐怖症ですが、症状を訴える患者には日々の睡眠習慣に誤りがあるという共通点があります。

眠くないのにベッドに入る

睡眠恐怖症の患者は、眠くないのにベッドに入っている人が非常に多いです。

人間には理想的な睡眠パターンがある

私たちの体には「サーカディアンリズム」という生体内のあらゆる活動を制御する機能が備わっており、夜になると自然に眠くなるようコントロールされています。加えて、起きてから約14〜16時間経過すると「睡眠圧(すいみんあつ:眠りたい欲求)」も高まってくるので、ベッドに入れば10分ほどで入眠します。

このように、人間は理想的な睡眠パターンを持っているため、特別なことをしなくてもこのパターンに合わせれば自然と眠ることができるのです。

「寝る直前」は実は眠くない⁉︎

では、なぜ睡眠恐怖症の人は就寝時間にベッドに入っても眠れないのでしょうか?それは、いつもベッドに入っている就寝時間が、実は「眠くない時間」の可能性があるからです。

先ほどの睡眠圧の説明を思い出してください。普通、人間は日中に活動すれば自然と睡眠圧は上がり、夜になるにつれてそれは高まります。「眠る直前」になれば睡眠圧は最高潮に達し、スムーズに入眠できるはずです。

しかし、イスラエルの睡眠研究家ペレッツ・レビー氏が行った研究によって、就寝時間から2時間前は睡眠圧が低下し、眠りにくくなることがわかったのです。

この結果を実際の睡眠に当てはめて考えると、毎日必ず0時に就寝している人は、22時〜就寝直前までが一番眠りにくいことになります。このような、入眠直前の眠りにくい時間帯を「フォビドンゾーン(侵入禁止域)」と呼びます。
フォビドンゾーンがなぜ起きるのかはわかっておらず、現在も研究が進められています。フォビドンゾーンの存在はレビー氏だけでなく、他の研究者たちも確認しています。

つまり、睡眠恐怖症の人は「眠くない時間」すなわちフォビドンゾーンの時間にベッドに入っているためになかなか寝つくことができない可能性が非常に高いといえるのです。

睡眠時間にこだわりすぎる

このような患者の多くは、睡眠時間にこだわりすぎている傾向があります。

確かに、人間の睡眠時間は6〜8時間が妥当とされています。ですが、この睡眠時間に囚われすぎるあまり「早く眠らなきゃ…!」と自分を追い込み過ぎるケースがよく見られます。これでは、どんなに時間を厳守していたとしても質の良い睡眠はとれません。

後ほど詳しく解説しますが、睡眠において大切なのは「量(時間)」ではなく、「質」です。したがって、睡眠時間がいつもより短くなってしまったとしても、ぐっすり眠ってその日の疲れを回復することができれば、睡眠の役割を十分に果たしているといえます。

ベッドで睡眠以外の行動をする

睡眠恐怖症の患者は、ベッドや寝床で睡眠以外の行動をしているケースが非常に多いです。

当然のことですが、寝床は寝るための場所です。それにもかかわらず、ベッドに入っても本を読んだり、音楽を聴いたり、スマホを操作したり、中には食べ物を食べたりする人もいます。

これでは、ベッドに入っても眠気はやって来ず、いつまで経っても眠りにつくことができません。スムーズな入眠には「ベッドに入ったら、余計なことはせず速やかに眠りにつく」ことがとても大切なのです。

昼夜逆転の生活習慣

さらに、最近の現代人にありがちな昼夜逆転生活も眠りにくさに拍車をかける要因のひとつです。

特に、近年は24時間営業の普及やそれに伴うシフト勤務の増加などによって、夜に仕事をして昼間に眠るという人も多くなりました。このような昼夜逆転生活は、人間の睡眠を司るサーカディアンリズムを狂わせ、適切な時間に寝起きできなくなることにつながります。

夜に眠りやすくするためには、サーカディアンリズムを乱さない正しい生活習慣を送ることが非常に大切になります。




睡眠恐怖症を克服する方法

寝室イメージ

上記の誤った睡眠習慣は、睡眠に関する誤った思考のクセ(認知)と悪い生活習慣(行動)によってもたらされたものです。睡眠恐怖症を克服するためには、これらを改めることが大切です。

こうした、誤った「認知」や悪い「習慣」を改める方法を「認知行動療法」と呼びます。ここからは、認知行動療法をもとにした、睡眠恐怖症を克服する方法を解説していきます。

眠くなってからベッドに入る

まずは、ベッドには十分に眠気を感じてから入るようにしましょう。

前章でも説明しましたが、ベッドに入ってもなかなか眠れない場合は、まだ「フォビドンゾーン」内のため眠気を感じにくい可能性があります。ゆえに、ベッドには眠くなってから入るようにしましょう。

それとあわせて、就寝時間の見直しを行いましょう。どれだけの時間眠ったかという「量」は、睡眠においてはあまり重要ではありません。時間に囚われすぎず、実際は何時に眠気を感じるのかを検証してみてください。

眠くない時は一旦寝床から離れる

いつもの就寝時間になってもなかなか寝つけない時は、思い切って寝床から離れることも大切です。

眠れないまま長時間ベッドで過ごしていると、無意識のうちに寝床を「眠れなくて苦しいところ」と認識してしまい、ベッドや寝床、寝室を想像するだけで不安を感じるようになります。

よって、10分ほど経過しても眠れない時は、思い切って寝室から離れましょう。そうすることで、寝室に対する認識を「眠れず苦しいところ」から「よく眠れて心地よいところ」へ切り替えることができます。

ベッドでは睡眠以外の行動はしない

ベッドでは睡眠以外の行動を控えるのが肝心です。

寝床で寝る以外の行動(スマホや読書、食事など)を習慣的に行っていると、体がベッドを寝るための場所だと認識しなくなり、いつまで経っても眠れない状態になります。

寝床に限らず、寝室そのものに就寝時以外は近づかないのがベストです。ワンルームで寝室とリビングの境界がない場合は、棚やパーテーションなどの配置を工夫することで、境界線を作るようにしましょう。

どうしても今日は早く眠りたいという時は

上記でフォビドンゾーンにベッドに入ってもなかなか眠れないとお伝えしましたが、翌日に出張などがあると早めに寝て翌朝に備えたいと思いますよね。ですが、就寝時間の2時間前はフォビドンゾーンのため、寝つくのが難しくなります。

そんな時は、無理に早く寝ようとするのではなく、いつもの時間に寝て早く起きるのがおすすめです。確かに睡眠時間は短いですが、質を担保することで十分に体を休めることが可能です。

下記で、早く眠りたい時におすすめの方法をまとめているので、こちらも参考にしてください。

睡眠恐怖症を予防する対策

カーテンを開ける女性

さらに、睡眠恐怖症は日々質の良い睡眠をとることによって対策・予防をすることができます。ポイントは、夜寝る時と朝起きる時の行動です。

【夜寝る時】いつも通りを心がける

質の良い睡眠をとるうえで大切なことは、ズバリ「いつも通り」です。

誰しも、旅先のホテルや旅館で眠れなくなったという経験があるでしょう。これは、脳が環境の変化を敏感に感じ取っていることが影響しています。

ゆえに、寝る前の脳には極力余計なことを考えさせないことが大切です。そこで、役に立つのが「退屈」です。電車に乗っている時や難しい本を読んでいる時は、自然と眠たくなりますよね。これは、脳が単調な状況(モノトナス)に退屈を感じ、眠気を催しているからです。

この性質を利用し、睡眠前はなるべく単調(モノトナス)を作り出すことが重要です。「いつも通りの時間に、いつも通りの部屋で、いつも通りのベッドに横になって寝る」というように、いつもの習慣をなるべく崩さないよう意識しましょう。

【朝起きる時】太陽光を浴びる

質の良い睡眠は、質の良い目覚めから始まります。
私たちの脳は、ブルーライトが眼に入ると眠りに導くメラトニンというホルモンが減少する性質を持っています。朝スッキリと目覚めるには、このメラトニンの減少を促進することが必要です。

そこで活躍するのが「太陽」です。太陽には、目覚めを促すブルーライトが大量に含まれています。朝起きて太陽の光を全身に浴びることで、脳が覚醒モードに切り替わり、スムーズに目覚めることができるでしょう。

朝起きて日光を浴びる際のポイントは次の通りです。

  • ・朝日を浴びるのは、数分間でOK
  • ・目で直接太陽を見るのは、眼にダメージを与えるためNG
  • ・天気が悪くて太陽が見えなくても、覚醒を促すブルーライトは眼に届いているので問題なし

下記の記事でも、夜にぐっすり眠るための方法について紹介しています。こちらも参考にしてください。

まとめ

眠る女性

今回は、睡眠恐怖症について深掘りしました。

睡眠恐怖症は、まだ曖昧な部分も多いのが現状です。今後さらなる研究が進み、原因などが解明されることが望まれます。

もし、自身に思い当たる症状があれば、ぜひこの記事を参考にして日々の睡眠習慣を見直してみてください。そして、症状が長期間続く場合は、躊躇せず医療機関を受診しましょう。




よくある質問

Q.睡眠恐怖症とはなんですか?

A.睡眠恐怖症とは、睡眠に対して過剰な恐怖心を抱くようになった状態で、恐眠症や寝台恐怖症、不眠恐怖と呼ばれることもあります。

Q.睡眠恐怖症を克服するにはどうしたら良いですか?

A.睡眠恐怖症を克服するには、眠くなるまで寝室に近づかないことや眠れない時は寝床から出ること、ベッドでは睡眠以外の行動をしないことなどが有効です。また、質の良い睡眠をとる対策は「【寝不足とメンタルの関係性】睡眠負債による影響と解消方法をご紹介」でも紹介しています。

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玉木 いずみ

医療系大学を卒業後、臨床検査技師の資格を取得。総合病院に就職し、臨床検査部にて主に検体検査を担当。その傍ら、独学で心理カウンセラーの資格を取得。現在はこれまでの経験を活かし、ライターとして医療系や心理系を中心に多くの記事を執筆中。「専門的な内容でもわかりやすく、そして正しく執筆する」ことがモットー。

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