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【適量ってあるの?】寝酒が睡眠に与える影響とは

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睡眠Dr. 編集部

睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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寝酒は睡眠に良い?悪い?

一人で酒を飲む女性
寝酒は睡眠に良いのか、まずは結論からお話しします。

【結論】質の良い睡眠には不向き

結論から言うと、質の良い睡眠に寝酒は不向きです。それどころか、寝る前の飲酒は睡眠の質を下げ、かえって不眠を引き起こす原因になります。

では、どうしてアルコールが睡眠に悪影響を与えてしまうのでしょうか?それには、以下の2つの理由があります。

  • ・スリープサイクルが崩れて、夜中に目が覚める
  • ・脱水・利尿作用で中途覚醒につながる

スリープサイクルが崩れて、夜中に目が覚める

人間の睡眠にはノンレム睡眠(脳も体も眠っている深い眠り)と、レム睡眠(脳は起きているが体は眠っている浅い眠り)があり、これらが代わる代わる現れてスリープサイクルを形成しています。

健康的なスリープサイクルは、以下の通りです。

  • ・入眠直後、ノンレム睡眠が現れ、その約90分後にレム睡眠が現れる
  • ・最初のレム睡眠は数分程度と短く、レム睡眠の終わりで1周期とカウントする
  • ・第1周期のノンレム睡眠が一番深くて長く、第2、第3と繰り返すにつれて徐々に時間も短く、浅くなっていく
  • ・逆に、レム睡眠は朝が近づくにつれて徐々に出現時間が長くなる

本来であれば、上記のような変化をしますが、睡眠前にアルコールを摂取すると、入眠直後のノンレム睡眠が本来の深さまで到達することができずに、レム睡眠に切り替わってしまいます。睡眠の性質上、最初のノンレム睡眠を阻害されると、その後のスリープサイクルも大幅に乱れてしまうため、夜中に目が覚めたり、朝極端に早く目が覚めたりするのです。

また、入眠してすぐのノンレム睡眠は最も深い眠りであるため、これを阻害されると熟睡感も得られなくなります。

このように、入眠前にアルコールを摂取してしまうと、本来の自然なスリープサイクルが阻害され、中途覚醒が促されてしまうのです。

脱水・利尿作用で中途覚醒につながる

寝る前にお酒を飲むと、トイレに行きたくて夜中に目が覚めたり、喉が乾いてカラカラになったりすることはよくありますよね。これも、アルコールの影響です。

アルコールには、バソプレシンという抗利尿ホルモン(排尿をしないように働きかけるホルモン)の働きを阻害する働きがあります。そのため、夜中にトイレに行かざるを得なくなり、目が覚めてしまうのです。

あわせて、尿によって外部に排出される水分量が増え、かつアルコール分解に多量の水を必要とするため、飲酒をした後の私たちの体は脱水状態に陥ります。これによって、体が必要な水分を補給しようと夜中に目を覚ましてしまうのです。




寝酒を続けるリスク

家でうなだれる女性と慰める男性
このように、入眠前のアルコール摂取は睡眠を妨げ、熟睡感を失わせる作用があります。加えて、スリープサイクルの乱れによる中途覚醒の誘発とアルコールの脱水・利尿作用もあるため、飲酒をした夜は十中八九、夜中に目を覚ますといってもいいでしょう。

そして、寝つけないからと寝酒を続けてしまうと、その影響は睡眠だけでなく、全身の健康を害することにもつながります。

アルコール依存症

連日アルコールを摂取し続けていると、次第にいつもの量では効果を感じなくなっていきます。これを「耐性」といい、アルコールの効果が効きにくくなって、いつの間にか飲酒量が2倍、3倍と増えていってしまいます。

そして、いつしかお酒を飲まないと眠ることができなくなり、さらに不眠によるストレスで飲酒量が増えていくという悪循環に起こるのです。この状態を、アルコール依存症といいます。

アルコール依存症とは、自らの意思で飲酒をコントロールできなくなる症状で、酒が手放せなくなり、酒をやめると手の震えや不眠などの離脱症状も見られるようになります。

一般的には、10日もたたないうちに耐性が生じて、入眠効果が薄れていくといわれています。ですので、日々の晩酌や寝酒が習慣化してしまっている人は、上記のようなアルコール依存による不眠症になるリスクが非常に高いです。

そして、一度アルコール依存症に陥ってしまうと、自分1人で抜け出すのはなかなか難しくなります。寝酒が習慣化し、不眠症状を感じている人は、速やかに医師に相談して治療を受けるようにしましょう。

いびき・睡眠時無呼吸症候群

また、寝酒を習慣にしている人は、いびきやそれに伴う睡眠時無呼吸症候群の発症にも要注意です。

アルコールには麻酔作用があるため、通常よりも喉や舌の筋肉を弛緩させ、舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。これにより発生するのが、いびきです。普段はいびきをかかないけれど、お酒を飲んだ日の夜はいびきをかく、という人が多いのはこのため。お酒を飲んだときだけであれば問題ないですが、これが習慣化してしまうと危険です。

いびきを日常的にかくようになると、その分睡眠中の呼吸が妨げられ、低酸素状態に陥ります。しかし、本人は寝ているので、自分がいびきをかいていることや、呼吸がしにくくなっていることに気づきません。すると、自分ではしっかり寝たつもりでも熟睡できなかったり、日中の眠気を感じたりするようになります。この状態が、睡眠時無呼吸症候群です。

睡眠時無呼吸症候群になると、日中の眠気や集中力の低下だけでなく、不眠による慢性疲労やストレス、そして次のような死亡率の高い合併症を引き起こすリスクが上がります。

  • ・高血圧
  • ・糖尿病
  • ・動脈硬化
  • ・心筋梗塞
  • ・脳卒中
  • ・うつ病

以上のように、習慣的な寝酒は不眠だけでなく、全身の健康に悪影響を及ぼしかねない大変危険なものでもあります。




なぜ、お酒を飲んだ方が良く眠れるのか

ウイスキーと氷が入っているロックグラス
しかし、巷では「お酒を飲んだ方がよく眠れる」といわれていますよね。

確かに、お酒を飲んだ日の夜は気分もリラックスして、布団に入った直後にストンと眠りに落ちたという人も多いでしょう。それには、アルコールの入眠時間を早めて寝つきを良くする働きが影響しています。

アルコールには脳の興奮を抑える作用がある

アルコールには、脳を興奮させる神経物質の働きを抑え、逆に脳を落ち着かせる神経物質の働きを活発にする作用があります。お酒を飲んだ後に心地良くなる感覚は、この働きによるものです。

実際、とあるトップオペラ歌手は、少しでも寝つきを良くするために、寝る前にお酒を飲むといいます。また、欧米には寝る前にお酒を嗜む「ナイトキャップ」という習慣もあります。

しかしながら、これだと上記の「寝酒は質の良い睡眠には不向き」という説明に矛盾してしまいます。一体どういうことなのでしょうか?それには、お酒の飲み方の違いが大きく関係しています。

お酒を飲んで寝つきをよくするオペラ歌手

上記のトップオペラ歌手は、少しでも寝つきを良くするために寝る前にお酒を飲みますが、これは単にビールやワインをガブ飲みしているわけではありません。飲んでいるのはアルコール度数の極めて高いウォッカ、しかもそれをショットでごく少量飲んでいるのです。

「えっ?アルコール度数の高いお酒を飲んだら、余計に眠りが妨げられるんじゃないの?」と思いますよね。実は、ウォッカなどのアルコール度数の極めて高いお酒は、ごく少量であればスムーズな入眠を促し、しっかり眠ることができると研究でも報告されています。

しかしだからといって、一般人である私たちも、眠れないときはウォッカをショットであおればいいかというと、そうではありません。オペラ歌手には、そこまでしないといけない事情があるのです。

「お酒を飲むとよく眠れる」の真実

オペラは、上演時間がとても長い演目です。途中休憩も挟むため、長いものだと5時間以上かかるものもあります。上演を終えて、身支度を整え、自宅に帰ったらもう深夜0時や1時を過ぎていることもよくあるそうです。そして、オペラ歌手は表現者であるため、体のコンディションが直接仕事に影響してしまいます。そんな中、翌日の公演も控えているとなると、のんびりしてはいられません。いち早く寝床に入り、翌日に備えて体を休める必要があります。

しかし、つい先ほどまで、煌々と輝くスポットライトの中、大勢の観客から割れんばかりの喝采を浴びながら全力で歌っていたのですから、脳は過度の興奮状態にあります。なかなか眠ることはできないでしょう。そこで、最後の手段としてアルコールの酔いの力を借りて、とにかく早く眠るようにしているのです。

「なんだかちょっと眠れないから、お酒飲んじゃおうかなー」と気軽に寝酒に走ってしまう私たちとは、全然事情が違います。もちろん、ウォッカをショットで飲んだとしても、オペラ歌手は朝までぐっすり眠り、すっきりと目覚めて翌日も完璧なコンディションでステージに臨んでいることでしょう。

つまり、こういった完璧を求められるトップスターが最後の手段として行うのが、「寝る前の飲酒」なのです。その本質を理解しないで行動だけを真似すると、睡眠の質を下げるばかりか、日々のパフォーマンス低下につながります。これが、「お酒を飲むとよく眠れる」の真実です。




どうしても夜にお酒を飲みたいときは

ワインと食事を楽しむ人の手元写真
ここまでの内容を読んで、寝る前の飲酒がどれほど睡眠に悪影響を及ぼすか、ご理解いただけたと思います。

しかし、中には会社の飲み会や食事会などで、どうしても夜寝る前にお酒を飲まなければいけない場面もあるでしょう。そして、普段はお酒を飲まない人でも、たまに自分へのご褒美でいいお酒を飲みたいですよね。

そんなときにぜひ意識してほしい、睡眠への影響を極力抑えたお酒の飲み方をご紹介します。ポイントは次の2つです。

  • ・寝る3時間前までに飲酒を済ませる
  • ・寝酒はアルコール度数の高いものをごく少量だけ

寝る3時間前までに飲酒を済ませる

睡眠への影響をできるだけ抑えるためには、寝る3時間前までに飲酒を終えるようにしましょう。寝つくときにアルコールの血中濃度がゼロであれば、少なくとも、睡眠に対するアルコールの悪影響は防げます。

また、晩酌のときどれくらいお酒を飲んでも良いのか、適量や限度量についても知りたい人は多いでしょう。しかし、はっきりいうと寝酒に適量はありません。

例えば、同じビール一杯でも、アルコールの分解速度には個人差があるため、ある人は1時間で分解できたとしても、ある人は分解するのに3時間以上かかることもあります。そのため、日本酒ならこれだけ、ビールならここまでと適量を提示するのは難しいのが現実です。

少なくとも、夜中に何度も目を覚ましたり、朝早く起きすぎたりするときは、明らかに飲み過ぎです。そのときは、飲酒量を減らす、晩酌と寝床につくまでの時間をもっと確保するなど、対策をとるようにしてください。

寝酒はアルコール度数の高いものをごく少量だけ

「今晩はどうしても、アルコールの力を借りてスムーズに眠りたい!」というときは、上記のオペラ歌手のようにアルコール度数の極めて高いもの(ウォッカ、カクテル、リキュールなど)を、ごく少量だけ飲むようにしましょう。アルコールが脳を落ち着かせ、ストンと眠りに落ちる効果が期待できます。

さらに、寝酒を行うときは寝る直前に行うことがポイントです。時間がたてばたつほど、アルコールの入眠効果は薄れてしまいます。ですので、クイっと一杯飲んだら速やかに口腔内を清潔にして、布団に入るようにしましょう。




まとめ

クリスマスツリーの前、シャンパングラスで乾杯する男女の様子
今回は、寝酒は本当に睡眠に効果があるのか解説しました。

アルコールには確かに入眠をスムーズにする効果がありますが、多量のアルコールは睡眠のリズムを崩し、質の低下や中途覚醒を引き起こします。

また、習慣的な寝酒はアルコール依存症や睡眠時無呼吸症候群など、危険な病気の原因にもなります。自分で飲酒量をコントロールできないのであれば、よく眠るための飲酒は控えた方が良いでしょう。

そして、お酒を飲む上で大切なことは、「酒は飲んでも呑まれるな」です。お酒がもたらすメリット・デメリットをしっかり理解し、上手に付き合っていくことを意識してください。

よくある質問

Q.寝酒は睡眠に効果がありますか?

A.アルコールには入眠を促す効果があります。しかし、同時に睡眠のリズムを崩し、中途覚醒を誘発する作用もあるので、寝つきを良くしたいからと寝る前に大量にアルコールを摂取するのはおすすめしません。

Q.寝酒や晩酌の適量はありますか?

A.寝酒に適量はありません。その理由は、アルコールの分解速度には個人差があるため、一概にここまでなら飲んでも良いという基準を示すのが難しいためです。少なくとも、夜中に目を覚ましたり、朝極端に早く起きたりする場合は明らかに飲み過ぎなので、飲酒量を調節するようにしてください。

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睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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