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【睡眠障害と何が違う?】概日リズム睡眠障害とは?原因や解消方法をご紹介

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睡眠Dr. 編集部

睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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概日リズム睡眠障害とは

不眠で眠れないシニア世代
はじめに、概日リズム睡眠障害とはどのような疾患なのか、どんな原因で発症するのか、詳しく説明しましょう。

どんな病気?

概日リズム睡眠障害とは、地球の昼夜サイクルとは異なるタイミングで睡眠や覚醒をするようになる疾患で、「夜になっても眠くならない」、「朝になってもなかなか起きることができない」などの症状を引き起こします。

睡眠障害との違いについては、概日リズム睡眠障害は睡眠障害のうちのひとつなので、両者に違いはありません。睡眠障害という疾患のカテゴリーの中に、概日リズム睡眠障害が含まれるというのが、正しい解釈です。睡眠障害に含まれる疾患については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

原因は?

概日リズム睡眠障害の原因は、体内時計の乱れです。

人間の体には、あらゆる生理機能を司る体内時計があります。その中でも、睡眠は概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれる生体リズムによってコントロールされています。

この概日リズムは、地球の自転に合わせて約24時間周期で働いていますが、実はピッタリ24時間ではなく、少々ズレがあるのです。正確には24.2時間で、地球の自転よりも20分ほどわずかに長いため、放っておくとどんどん概日リズムが後ろにずれてしまいます。

ですが、このズレを修正してくれるものがあります。それが、太陽です。太陽に含まれるブルーライトは波長が380~500nmと短く、とても強いエネルギーを持つため、目の奥にある網膜までしっかりと光が届きます。すると、太陽の光を感じた脳は朝になったと判断し、体内時計のズレを修正して全身に覚醒を促します。これが、私たちが適切な時間に寝起きができるメカニズムです。

しかし、概日リズム睡眠障害はこの体内時計のズレが解消されていません。いつまで経っても正しいタイミングに体内時計が修正されないため、夜になっても眠れなかったり、朝になってもなかなか起き上がることができなかったりするのです。

どうして体内時計が乱れるの?

では、どうして修正されるはずの体内時計のズレが、いつまでも解消されないのでしょうか?それには、太陽が発するブルーライトに大きな落とし穴があるためです。

先ほど、太陽が発するブルーライトは波長が短いため、脳に覚醒を促してしまうほどの強いエネルギーを持つと説明しました。このブルーライトですが、発しているのは太陽だけではありません。私たちにとって非常に身近なスマートフォンやパソコン、テレビなどのデジタル機器やLEDライトなどもブルーライトを発しています。

元来、太古の人間にとってブルーライトのような強力な光は、太陽からしか浴びることはありませんでした。しかし、現代では技術が発達したことにより、夜遅くまでの残業や勉強、24時間営業の定着、それに伴う夜勤やシフト勤務によって、夜遅くになってもブルーライトを浴び続ける環境ができあがってしまいました。

これにより、夜になっても眠気がやってこず、そのぶん入眠時刻が遅くなります。それに伴って、睡眠時間も短くなるため、朝になって起きようとしてもなかなか起きることができず、昼間に眠気を感じるようになってしまうのです。




概日リズム睡眠障害で見られる症状のパターン

悩みを抱える女性、首をかしげている様子
上記のように、概日リズム睡眠障害は修正されるはずの体内時計のズレが是正されないことが原因で引き起こされます。

そして、発症する症状のタイプによって次の5つに分類されます。

交代勤務型

勤務スケジュールが昼夜逆転しているために、体内時計と地球の明暗周期が合わなくなった状態です。主に、夜勤や当直、シフト勤務をしている人に多く見られます。

  • <交代勤務型になりやすい人>
  • ・時差ぼけ(特に西から東に移動した場合など)
  • ・常に不規則なシフト勤務をしている人

睡眠相後退型(睡眠相後退症候群)

夜間にスマホなどで強い光を浴びることにより、体内時計が乱れて入眠時刻が遅くなってしまう病態です。主に、夜ふかしをする10代が発症し、長期化すると明け方近くになっても寝つけず、その反動で一旦寝つくと昼過ぎまで起きることができない状態に陥ります。

また、無理して起きようとしても強い眠気や倦怠感を感じるため、日常生活が通常のように送れなくなり、非常に苦痛を感じるのも特徴です。

  • <睡眠相後退型(睡眠相後退症候群)になりやすい人>
  • ・就寝時刻と起床時刻が頻繁に変わる生活をしている人(極端な遅寝遅起きなど)

睡眠相前進型(睡眠相前進症候群)

日中の活動性の低下や極端な早寝などの生活習慣により、体内時計が乱れて睡眠が早い時間帯にずれてしまう病態です。夕方からごろから眠くなり、早朝に目が覚めてしまいます。高齢者に多く、加齢によるメラトニン(眠りに導くホルモン)の低下も要因の一つだと考えられます。

  • <睡眠相前進型(睡眠相前進症候群)になりやすい人>
  • ・高齢者:昼夜の周期に対する感受性が低下する

非24時間概日リズム睡眠障害

入眠・起床時間が毎日1〜2時間ずつ後ろにずれ、1日24時間のリズムと合わなくなった状態です。患者の多くは全盲者で、太陽光の刺激を受けないことで体内時計がずれたままになります。また、不登校や引きこもり、長期休暇などで長期間の昼夜逆転生活を送ったあとに出現することがあります。

  • <非24時間概日リズム睡眠障害になりやすい人>
  • ・長期間の寝たきり生活をしている人
  • ・盲目
  • ・日光を長期間浴びない生活をしている人(不登校や引きこもり)

不規則睡眠-覚醒障害

1日の中で睡眠と覚醒が不規則に出現する疾患で、夜間の不眠や、日中の眠気、昼寝の増加などがみられます。この疾患は、一部の脳疾患に合併して発症するほか、発達障害をもつ子供に見られるケースが多いです。

  • <不規則睡眠-覚醒障害になりやすい人>
  • ・アルツハイマー病やパーキンソン病などの脳疾患を患っている人
  • ・発達障害を持つ子供



主な治療法

病院の受付、医療事務の女性
これらの概日リズム睡眠障害の治療法としては、薬物療法、高照度光照射療法、生活指導などがあります。

薬物療法では、睡眠時間が毎日同じになるように、メラトニン作動薬(ラメルテオン)やビタミンB12製剤(メコバラミン)を使用してします。また、睡眠導入剤を用いて入眠時間を固定する治療も行います。

高照度光照射療法は、毎朝一定の時間帯に、2500ルクス以上の光を2時間以上浴びることによって、体内時計をリセットすることを目的として行います。

その他、睡眠時間や入眠時刻、起床時刻などを毎日記録する睡眠日誌をつけることで、病態を自覚し、生活習慣を改善する治療も並行して実施されます。




自分でもできる!概日リズム睡眠障害の解消法

屋内、窓の外を眺める白い服を着た若い女性の写真
ここからは、初心者でも簡単にできる、概日リズム睡眠障害の解消法をお伝えします。

夜間のブルーライトは最小限に

夜間のブルーライトの使用は、最小限にとどめるようにしましょう。特に、SNSやゲームなどで深夜になってもだらだらとスマホを見てしまうという人は、アラームを設定したり、時間になるとロックがかかるアプリなどを使ったりして、使い過ぎを制限するようにすることが大切です。

また、LEDライトにもブルーライトが含まれているため、夜間の照明は暖色系の赤みがかったものに切り替えると、体内時計への影響をできるだけ抑えることができます。

どうしても夜間にスマホやパソコンなどを使わなければいけないときは、ブルーライトカットメガネなどを使用し、少しでも影響を抑えるよう工夫してください。

朝起きたらカーテンを開ける

朝起きたら何よりも先にカーテンを開けて、太陽の光を全身に浴びるようにしましょう。こうすることで、太陽光に含まれるブルーライトが体内時計のズレを修正し、全身に覚醒を促してくれます。

太陽光を浴びるときのポイントは、次の通りです。

  • ・朝起きたらカーテンを開け、朝日を数分間浴びる。
  • ・曇りや雨で太陽が見えなくても、覚醒に必要な光は届いているので問題なし。
  • ・太陽の光を直接見るのは、目を痛める可能性があるのでNG。

日中もできるだけ日光を浴びる

そして、朝だけでなく、日中も太陽の光を浴びるように心がけましょう。

日中にしっかりと太陽光を浴びることで、夜間に睡眠を促すメラトニンが分泌されやすくなり、夜に眠りやすくなる効果が期待できます。

仕事中はオフィスにこもりがちになりますが、昼食の時間は屋外でランチを食べたり、休憩時間に窓辺でストレッチをしたりして、日常の中に日光浴を取り入れてみてください。




まとめ

ベッドで眠る女性
今回は、概日リズム睡眠障害について解説しました。

私たちの体には、体内時計と呼ばれる生体機能が備わっており、その中でも睡眠は、概日リズム(サーカディアンリズム)によって睡眠・覚醒のタイミングが決定されています。本来、概日リズムは地球の自転である24時間周期に合うように、ズレを修正しながら働いていますが、概日リズム睡眠障害はこのズレが解消されないままになっています。

一部疾患によるものや加齢が原因のケースもありますが、大きな原因は昼夜を問わずスマホやLEDなどでブルーライトを長時間浴びるようになったことにより、覚醒が促されて眠りにくくなったことがあげられます。

そのため、概日リズム睡眠障害を防ぐには、体内時計のズレを日々しっかりと解消していくことが大切です。夜間のスマホ使用はできるだけ最小限にとどめ、部屋の照明を暖色系のものにすることで、眠りやすくなる効果が期待できます。そして、朝になったらカーテンを開けて、太陽光に含まれるブルーライトをしっかり浴びましょう。体内時計のズレが太陽光によって修正され、すっきりとした目覚めにつながります。

「夜なかなか寝つけない…」、「朝になっても起き上がれない…」と悩む人は、ぜひこの記事を参考にして、自分の睡眠習慣を見直すきっかけにしてください。

よくある質問

Q.概日リズム睡眠障害と睡眠障害にはどんな違いがありますか?

A.概日リズム睡眠障害とは、適切な時間に寝起きできなくなる睡眠障害のひとつで、両者に違いはありません。睡眠障害というカテゴリーの中に、概日リズム睡眠障害が含まれるというのが、正しい解釈です。睡眠障害については、【どんな種類がある?】睡眠障害について徹底解説にて解説しています。

Q.概日リズム睡眠障害の治療法にはどんなものがありますか?

A.概日リズム睡眠障害の治療では、薬物療法や高照度光療法などの治療も行われますが、基本は睡眠習慣を改善するための生活指導が中心です。睡眠の実態を把握することで、正しい体内リズムに調整し、望ましい時間に寝起きできるようにしていきます。

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