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睡眠の質

エアコンつけっぱなしvsこまめな切替|電気代・睡眠の質・体への負担

「つけっぱなし」と「こまめな切り替え」ではどちらの方が快適に眠れる?

エアコンを操作する手元

まずは、就寝時のエアコンはつけっぱなしにする方が良いのかどうか、睡眠の質への影響について見ていきましょう。

夏も冬も「つけっぱなし」の方が快適に眠れる

就寝時のエアコンは、つけっぱなしにする方が夏でも冬でも快適に眠れる可能性が高いです。

特に、最近の夏は夜になっても気温が下がらず、熱帯夜になることが増えました。このような状態で眠ろうとしても、寝苦しくてなかなか熟睡することができませんよね。

これは、人間は眠りに入る際には深部体温(体の内側の温度)を下げることで入眠していますが、室温が高いと体温の低下が十分に起こらず、入眠阻害が起こることに由来します。
ゆえに、睡眠の質を高めるためにも、寝室の室温を適温に保つことは重要といえます。

では、室温が低下する冬場はエアコンをつけなくても良いのでしょうか?確かに、良い睡眠を取るためには体温を下げる必要がありますが、暖房をつけないと逆に体温が下がり過ぎて睡眠の質の低下につながります。
したがって、冬場も夏と同様、夜間は暖房をつけっぱなしにするのが良いでしょう。




「つけっぱなし」と「こまめな切り替え」ではどちらの電気代がお得?

電卓イメージ

「でも、寝ている間中エアコンを使い続けると、電気代が心配…」と考える人もいるでしょう。
実際、とある空調メーカーで、夏場のエアコンを「30分間隔でこまめに入り切り」した場合と「つけっぱなし」にした場合を比較し、どちらの電気代が安いか検証が行われました。

就寝時のエアコンは「こまめな切り替え」をした方がお得の場合が多い

検証の結果、日中の時間帯(9:00〜18:00)はつけっぱなしの方が電気代は安くなり、夜間(18:00〜23:00)はこまめに入り切りした方が安くなりました。

通常、エアコンは外気温と設定温度の差が大きい運転開始時に最も電力を消費します。そのため、外気温が上昇している日中は「つけっぱなし」の方が消費電力は抑えられ、逆に外気温が落ち着いた夜間は「こまめに入り切り」した方が消費電力は抑えられたと推察されます。

今回の実験では、就寝時のエアコンの消費電力と電気代の比較は行われていませんでした。
ですが、結果を踏まえて考えると、就寝時(23:00以降)も外気温と設定温度の差が少ない場合が多いため、「こまめ入り切り」した方が電気代を安く抑えられる可能性が高いと想定されます。

また、冬場でも同様の実験が行われており、長時間の外出や就寝時は「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」した方が消費電力は抑えられ、お得なことがわかりました。

これらの結果をまとめると、夏場でも冬場でも、就寝時のエアコンは「こまめに切り替え」した方がお得な場合が多いといえるでしょう。




エアコンをつけっぱなしで寝たときの体への影響は?

眉間を押さえる女性

では、エアコンをつけっぱなしで寝たときの体への影響はどうなのでしょうか?

直接体に風が当たらなければOK

誰しも、「昨晩エアコンをつけっぱなしにしていたら、寝冷えして風邪をひいた」「エアコンをつけていたら、室内が乾燥して起きたら喉が痛い…」など、就寝時につけていたエアコンのせいで体調を崩した経験があるでしょう。

確かに、エアコンによる冷やし過ぎや温め過ぎ、乾燥は体調不良の原因になります。特に、エアコンの風が直接体に当たると、風邪をひいたり、だるさにつながったりします。

ですが、エアコンの特性を理解してうまくいかせば、体調を崩すリスクを減らすことができます。エアコンの風が直接体に当たるのを防げば、一晩中つけっぱなしで寝ても問題はないといえるでしょう。




【結論】就寝時のエアコンはつけっぱなしが吉

快眠している女性

ここまでの内容をまとめると、熱帯夜や極寒の真冬の夜でも快適に過ごすには、エアコンのつけっぱなしが必要といえるでしょう。

確かに、つけっぱなしの方が設定をこまめに切り替えるよりも電気代がかかる場合があるかもしれません。ですが、毎日の睡眠の質を維持し、健康に過ごすためにはエアコンの使用は必要不可欠です。

何より、最近の気候は一歩間違うと命を落とす危険があります。実際、夜に「節電のため」とエアコンをつけず、蒸し暑く熱のこもった室内で休んだことで熱中症になり、病院に緊急搬送されたケースも報告されています。

このように、特に夏場はエアコンが命を守る大事な生命線となることもあります。そのため、睡眠の質だけでなく、私たちの命を守るためにも、エアコンのつけっぱなしが吉といえるでしょう。




より快適に眠れるエアコン活用法

サーキュレーターイメージ

ここからは、より快適に眠れるエアコンの活用法をご紹介します。あわせて、エアコンの効きを良くして電気代を少しでも抑える方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

適切な温度・湿度に設定する

まずは、部屋の温度と湿度を適切に設定しましょう。どの温度と湿度を心地よいと感じるかは人それぞれですが、一般的に推奨されている季節ごとの室温と湿度は下記の通りです。

  • ・夏:室温25~28℃、湿度50~60%
  • ・冬:室温18~25℃、湿度40~50%

上記を踏まえて、エアコンの温度を設定するのが良いでしょう。

あわせて、部屋の湿度も大切です。どんなに室温を適切なものに設定しても、湿度が高ければいつまでも汗が乾かず、体温は下がりません。逆に、冬場は湿度が下がり過ぎると室内が乾燥して冷えの原因になります。

ゆえに、室温だけでなく、湿度にも気を配るようにしましょう。

おやすみモードを活用

現在使用しているエアコンに「おやすみモード」や「快眠モード」などの機能が搭載されている場合は、ぜひ使用することをおすすめします。

「おやすみモード」や「快眠モード」とは、エアコンが自動で睡眠に適した環境にしてくれる機能です。各メーカーによって違いはありますが、主に次のように作動するケースが多いです。

  • ・エアコンの風が直接体に当たらないよう、風向きが自動で上向きに設定される
  • ・室温が適温になったら、自動的にスリープモードになる

また、最近はAIがより睡眠に適した温度・湿度に自動調整してくれるものもあります。設定をこまめに切り替える手間も省けるので、機能がある場合はぜひ使ってみてください。

夏はサーキュレーターや扇風機を活用する

部屋の温度を効率的に下げたい夏場は、サーキュレーターや扇風機を使うのも大変有効です。

サーキュレーターや扇風機を使うと、部屋の中に気流(空気の流れ)が生まれます。人間は、温度がそれほど低くなくても、空気の流れを感じると涼しく感じます。

また、サーキュレーターや扇風機の風向きを工夫すれば、エアコンの風が直接体に当たることを防ぐこともできます。具体的には、エアコンとは反対側の冷風が床に落ちる位置にサーキュレーターや扇風機を設置してエアコンに向けて風を送ることで、空気が循環してより部屋の温度を下げることが可能です。

また、効率的に部屋を冷やすことができれば、エアコンも短時間で部屋が涼しくなったと判断するため、余計な冷風が出ることなく冷やし過ぎを防げます。さらに、電気代も抑えやすいので一石二鳥です。

冬は加湿器を活用する

暑い夏とは反対に、部屋の温度を効率的に上げたい冬場は、加湿器の活用がおすすめです。

前述しましたが、冬場に暖房を使用して空気が乾燥し過ぎてしまうと、より寒さを感じて使い過ぎの原因になってしまいます。ですので、上記に記載した冬場に推奨されている室内の湿度になるよう加湿器をセットし、部屋の乾燥を防ぎましょう。

さらに、冬場も夏場と同様、サーキュレーターを活用して空気を循環させるのも効果的です。夏場はエアコンとは反対側にセットし、風をエアコン側に向けていましたが、冬場は少々置き方が異なります。

暖房から出た暖かい空気は部屋の上に溜まる性質があるため、サーキュレーターはエアコンより少し離れた部屋の真ん中あたりに配置し、真上に向けて風を当てることで、空気が循環し効率良く部屋を暖めることができます。また、サーキュレーターをエアコンの対角線上に置いて、風をエアコンに向けるのも有効です。

夏は上向き、冬は下向きの風にする

基本的に、エアコンに「おやすみモード」などの就寝時用の設定が搭載されている場合は、エアコンに運転を任せれば良いです。
しかし、自動運転機能などがないエアコンの場合は、自分で風向きを設定しなければいけません。その場合、夏場は上向きに、冬場は下向きに設定すると良いでしょう。

理科の授業などで習ったかもしれませんが、冷たい空気は下に溜まり、暖かい空気は上に溜まる性質があります。ですので、冷房使用時はルーバー(エアコンの吹き出し口にある羽)を上に向けることで、天井伝いに冷風が部屋全体を通り、効率的に部屋を冷やすことができます。

反対に、暖房使用時は足元に溜まった冷たい空気を押し上げるように下に向けて風を送ることで、熱効率がアップするのと同時に底冷えも防ぐ効果が期待できます。

さらに、上記で説明したサーキュレーターや扇風機をうまく活用することで、より部屋の空気が循環して素早く部屋を冷やす、もしくは暖めることができます。

エアコンの清掃や室外機の点検も忘れずに

エアコンの冷暖房効率を上げるためには、エアコンの清掃や室外機の点検も欠かせない要素です。

エアコンは、長年使用すると内部に汚れやカビが溜まり、効きの悪さにつながります。加えて、その分多くの電力を消費するため、より多くの電気代がかかってしまいます。

ゆえに、エアコンは定期的に清掃をするのが大切です。最近は、自動清掃機能がついたエアコンや、自宅でも簡単に掃除ができるエアコンが増えました。「最近、エアコンの掃除していなかったな…」と思った人は、ぜひこの機会にやってみてください。

あわせて、1〜2年に1回の頻度でエアコンのクリーニング業者に依頼して、内部の複雑な構造に溜まった汚れを綺麗にしてもらうのも良いでしょう。

そして、室外機の点検も大切です。作動中に異音がしないか、室外機の中や周辺にゴミが溜まっていないか確認しましょう。もし、異変を感じたら、故障につながる恐れがあるので、なるべく早く専門の業者に点検してもらうのを推奨します。




まとめ

エアコンイメージ

今回は、夜にエアコンをつけっぱなしにすると睡眠の質や電気代、体にはどのような影響があるのか解説しました。

結論としては、睡眠の質を維持するためには、適切な温度・湿度に設定したエアコンを一晩中つけっぱなしにする方が良いといえます。当然、その分多くの電気代がかかってしまうのも事実です。

しかし、近年の気候はときに私たちの命を脅かします。特に、最近の夏場は夜でも30℃を超える日も多々あり、エアコンを使用しなければ熱中症になる危険があります。

ですので、睡眠の質だけでなく、命を守るためには、エアコンの適切な使用が不可欠といえるでしょう。エアコンだけでなく、サーキュレーターなどをうまく活用すると、より効率的に部屋を冷やす、もしくは暖めることができるのでおすすめです。




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参考文献

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