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睡眠時無呼吸症候群の症状・原因

【把握できてる?】睡眠時の血中酸素濃度について

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睡眠Dr. 編集部

睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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睡眠時血中酸素濃度って何?

パルスオキシメーターまずは、睡眠時血中酸素濃度について基本情報を解説していきます。

睡眠時血中酸素濃度とは

「睡眠時血中酸素濃度」とは、その名の通り睡眠時において血液(動脈血)中にどれくらいの酸素が含まれているかを示す値です。

この「血中酸素濃度」は、「血中酸素飽和度」と表記されることもあり、医療現場では英語で飽和を意味する「サチュレーション」とも呼ばれています。

医療ドラマや映画などで、患者が救急治療室に運び込まれてきたときに、医師が「サチュレーション用意して!」とか「サチュレーションいくつ?」と看護師に指示を出すシーンを見たことがあると思いますが、これは血中の酸素はどれくらいかを確認しているのですね。

血中酸素濃度は、測定方法の違いによって次の2種類に分類されます。

    ・経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)
    パルスオキシメーターなどを用いて指先に機械を装着し、皮膚を経由して計測する

    ・動脈血酸素飽和度(SaO2)
    実際に血液を採取して測定する

この2つの値はほぼ同じになるため、比較的測定が簡単な経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を、単に血中酸素飽和度と呼ぶこともあります。

どうやって測定するの?

おそらく多くの人が、指先に装置をはめ込んで測定するパルスオキシメーターを一度は経験したことがあると思います。しかし、どうして指先に30秒ほど機械をはめただけで、血液中の酸素濃度を測定できるのか、不思議に思いませんか?

私たちの体内を流れる血液中には赤血球が流れており、ヘモグロビンと結合することで全身に酸素を運搬しています。この赤血球は、ヘモグロビンと結合していない状態(各組織への酸素運搬を終えた静脈血)だと暗赤色(あんせきしょく:少し暗めの赤色)をしていますが、ヘモグロビンと結合する(各組織へ酸素を運搬する動脈血)と鮮やかな鮮赤色になります。

この色の違いを利用して、パルスオキシメーターでは指先の皮膚に光を当てることで、光の吸収度合いを測定し、赤血球のヘモグロビンと結びついた酸素を計測しているのです。

どんなときに測定するの?

SpO2やSaO2を測定することで、十分な酸素が体内に供給されているかをリアルタイムで確認することができます。

特に、パルスオキシメーターならば指先に挟むだけで簡単にSpO2がわかるので、手術室やICU(集中治療室)などの重篤患者の生命維持管理や在宅医療の現場、呼吸器疾患を持つ患者のバイタルチェックの目的で利用されます。

また、最近では新型コロナウイルスの重症度を判定するツールとしても欠かせない存在となっています。




酸素飽和度が下がるとどうなるの?

身体を抑えるスーツの男性酸素飽和度の正常値は99%〜96%ですが、90%を下回ると十分な酸素を全身の臓器に送れなくなった状態、すなわち呼吸不全とされます。それ以降の低下に伴って現れる症状は、以下の通りです。

  • ・90%以下:酸素投与が必要になる
  • ・75%以下:チアノーゼ(全身に酸素と結びついていない赤血球が増えることで、皮膚や唇などが青白く変色すること)が現れる
  • ・50%以下:臓器への酸素供給が間に合わなくなり、昏睡などの意識障害および臓器障害が出現する
  • ・30%以下:ほとんどが死亡する

これらに陥る主な疾患は、肺などの呼吸器に障害が起こる呼吸器疾患がまずはあげられます。ですが、中には心疾患に伴って肺での換気に障害が起こる場合や、呼吸を司る脳に何らかの異常が発生して制御ができなくなる場合もあります。




睡眠時に血中酸素濃度が下がる原因は?

苦しそうに眠る男性
このような血中酸素濃度ですが、なぜ睡眠時に低下が見られるのでしょうか?原因として考えられる疾患は、睡眠時無呼吸症候群です。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、何らかの原因で気道が狭くなり、無呼吸状態(睡眠中に呼吸が止まる)に何度も陥る疾患です。パルスオキシメーターで無呼吸になっているときの血中酸素濃度を調べると、90%を頻繁に下回ることが確認できます。

この疾患になると、睡眠中に無呼吸が繰り返されるため、その度に脳が覚醒して睡眠が妨げられます。ですが、脳は覚醒しているにもかかわらず、本人には自覚はありません。その結果、しっかり寝たはずなのに疲れが取れないなどの慢性的な睡眠不足や、日中の耐え難い眠気を感じるようになるのです。

睡眠時無呼吸症候群の放置は命にかかわる⁉︎

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、中途覚醒による慢性的な睡眠不足ですが、治療を後回しにして放置すると、さまざまな合併症を引き起こすことにつながります。

例えば、高血圧です。睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に繰り返し無呼吸状態に陥るため、脳は酸素が著しく足りなくなる低酸素状態に陥ります。すると、脳は酸素が足りないので交感神経を興奮させて心拍数を上げ、全身の血流を活発にさせます。これによって、血圧が上昇し、それに伴って肥満や糖尿病などの生活習慣病を引き起こします。

さらに、これらの疾患は動脈硬化につながり、いずれは脳卒中や心筋梗塞などの突然死のリスクが非常に高い疾患をも招きます。加えて、居眠りによる交通事故や労働災害による死亡リスク、自律神経の乱れによるうつ病発症の可能性も高まります。

速やかに医療機関の受診を!

上記のように、睡眠時無呼吸症候群の放置は命を及ぼしかねない危険なものです。症状に心当たりのある人は、速やかに医療機関を受診し、治療を受けることが大切です。下記に、睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックリストをまとめました。自分の睡眠状態が正常なものか知るために、ぜひ試してみてください。

  • <寝ている間に見られる症状>
  • ・睡眠中は毎晩のようにいびきをかく
  • ・寝ている間にいびきや呼吸がよく止まる
  • ・家族やベッドパートナーから指摘されるほどの大きないびきをかく
  • ・息苦しさを感じて起きることがある
  • ・寝汗をかく
  • ・尿意で目が覚める
  • <起きている間に見られる症状>
  • しっかり寝たはずなのに強い眠気を感じる
  • ・倦怠感がある
  • ・日中居眠りをしてしまう
  • ・集中力が続かない
  • ・熟睡感がない
  • ・若い頃より20kg以上太った



睡眠時無呼吸症候群の検査から診断、治療の流れ

診察をする医師では、医療機関を受診するとどのように検査や診断が行われ、治療に至るのでしょうか?

検査から診断

睡眠時無呼吸症候群の検査には、下記のように2段階あります。

  • 1.簡易検査:自宅で行う
  • 2.精密検査:病院に一泊して行う

自宅で行われる簡易検査は、医療機関から貸し出される検査機器を使って検査を行います。このときに用いられるのが、パルスオキシメーターです。睡眠時にパルスオキシメーターを手に装着し、睡眠中の酸素飽和度と脈拍を測定します。

この検査の結果、呼吸が10秒間以上止まる無呼吸や、酸素飽和度が平常時よりも3~4%以上低下する低呼吸が1時間のうちに5回以上確認されると、無呼吸症状があると診断されます。

そして、簡易検査によってさらに詳細な検査が必要だと判断されると、精密検査の終夜睡眠ポリグラフ検査を行います。この検査は自宅ではなく、医療機関に一泊して実施します。検査法も、簡易検査よりもさらに大掛かりになり、血中酸素濃度と脈拍に加えて、脳波や筋電図、無呼吸の状態なども測定することで、より精密に睡眠の状態を確認することが可能です。

この検査によって、無呼吸の出現が20回以上見られると、睡眠時無呼吸症候群と確定診断されます。

治療

睡眠時無呼吸症候群の治療で、最もポピュラーな方法とされているのが、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)です。この治療は、睡眠時にマスクを着用することでそこから持続的に空気が送り込まれ、無呼吸の原因である気道の閉塞を防ぎます。

CPAPは、何か薬物を投与するわけでも、外科的なアプローチを行うわけでもありません。ゆえに、現在数ある睡眠時無呼吸症候群の治療法の中で、最も効果的で安全性の高い治療法とされています。

ただし、常にマスクから空気が送り込まれるため、最初は苦しくて寝られず、慣れるまでの時間がかかる場合があります。また、即効性はないため、長期スパンでの治療が必要になります。そのため、治療を始める前に医師としっかり治療計画やスケジュール、治療によって生じるデメリットなどについて、しっかり話し合うことが必要になります。




睡眠時の血中酸素濃度を下げないためには何をすれば良い?

ウォーキングをする男性最後に、睡眠時の血中酸素濃度を下げず、無呼吸にならないようにするには、どのような対策を行えば良いのか解説していきましょう。

生活習慣の改善

効果的な方法は、生活習慣の改善です。特に、無呼吸やいびきを発生させる大きな原因のひとつに、肥満があります。

肥満になると、上半身を中心に腹回りや首、舌、喉にも脂肪が沈着します。これが寝ている間に気道を狭め、いびきや無呼吸を発生させやすくなってしまうのです。

そのため、肥満解消・肥満防止はいびきや無呼吸の対策としては必須といっても過言ではありません。加えて、寝る前の過剰な飲酒や日常的な喫煙も気道の閉塞を促進させ、いびき・無呼吸を誘発する原因となります。習慣化している人は、これらもやめることをおすすめします。




まとめ

パルスオキシメーター今回は、睡眠時血中酸素濃度について解説しました。

血中酸素濃度や、それを測定するパルスオキシメーターは、新型コロナウイルスとともによく耳にするようになりましたが、睡眠時無呼吸症候群においては、実は身近な存在です。

睡眠時に血中酸素濃度を下げない、すなわち無呼吸を起こさないためには、日々の生活習慣に気を配り、気道の閉塞につながらないようにすることが肝心です。

また、すでにいびきや無呼吸、それに伴う日中の居眠りに悩まされている人は、ぜひ本記事に記載されているセルフチェックを行って、自分の状態を把握するようにしてください。そして、複数の項目でチャックがついたら、速やかに医療機関を受診し、治療を受けましょう。

よくある質問

Q.睡眠時血中酸素濃度とは何ですか?

A.睡眠時血中酸素濃度とは、その名の通り睡眠時において、血液(動脈血)中にどれくらいの酸素が含まれているかを示す値です。血中酸素濃度は、血中酸素飽和度と表記されることもあり、医療現場では英語で飽和を意味する「サチュレーション」とも呼ばれています。

Q.どうして、睡眠時に血中酸素濃度が低下するのでしょうか?

A.原因として考えられるのが、睡眠時無呼吸症候群です。睡眠中に何度も呼吸が止まる無呼吸状態になることで、血中酸素濃度が低下し、慢性的な睡眠不足に陥ります。

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