睡眠時無呼吸症候群

【あなたはどれくらい?】睡眠時無呼吸症候群の重症度について

2022.11.06
睡眠時無呼吸症候群と診断された方にとって、ご自身の病状がどれだけ重症なのかはとても気になる点だと思います。
また重症度によってどういった予後を迎えるのかも気になりますよね。 そこでこの記事では、睡眠時無呼吸症候群の重症度についてご説明していきます。

睡眠時無呼吸症候群の重症度の定義とは?


生きていく上ではたくさんの病気にかかってしまうリスクがありますが、実際にその病気にかかったとき最初に気になるのは「自分の病状はどれくらい重症なのか?」だと思います。
例えば癌であればステージ次第で余命に大きく影響しますし、高血圧や糖尿病などの生活習慣病でも血圧や血糖値次第で治療法が変わってきます。
睡眠時無呼吸症候群と診断された方にとってもそれは同様であり、重症度次第で治療法や予後も変わってくるのです。

では睡眠時無呼吸症候群の場合、どのように重症度を定義しているのでしょうか?
結論から言えば、睡眠時無呼吸症候群の重症度を定義するには、AHI(Apnea Hypopnea Index)と呼ばれる指数が用いられています。

またAHIは重症度の判定のみならず治療方法の選択にも用いられていて、更には患者さんに生じうる合併症や予後、生存率にも差が出るため、医療機関にとっても患者さん自身にとっても非常に重要な指数なのです。
そこで、重症度の定義に用いられるAHIとはどのようなものなのかを解説するとともに、重症度による合併症や予後の違いについても解説していきます。

重症度の定義に用いられるAHIとは?

結論から言えば、睡眠時無呼吸症候群の重症度の定義に用いられるAHIとは、「睡眠中の低呼吸回数+無呼吸回数/総睡眠時間」という計算式によって算出されます。

少し小難しい単語が多いですが、分かりやすく解説します。
AHIのApneaは無呼吸、Hypopneaは低呼吸を意味しており、これらの合計回数を総睡眠時間で除す事で睡眠1時間あたりの低呼吸と無呼吸の合計回数が算出され、そのままAHIとして扱われます。

具体的な低呼吸や無呼吸の定義は下記の通りです。
低呼吸=10秒以上続く30%以上の気流低下、もしくは3%以上の酸素飽和度低下あるいは覚醒反応
無呼吸=10秒以上の気流停止

例えば、睡眠中に低呼吸が10回、無呼吸が10回、総睡眠時間が10時間ならAHIは2になります。
算出されたAHIが5未満であれば睡眠時無呼吸症候群は否定的ですが、AHIが5以上(1時間の睡眠あたりの低呼吸もしくは無呼吸が5回以上)であれば睡眠時無呼吸症候群と診断され、5<AHI<15で軽症、15<AHI<30未満で中等症、30<AHIで重症と診断されます。

重症度判定は合併症のリスクや予後を予測する上で非常に重要な役割を果たしています。

重症度による医学的合併症とは?

睡眠時無呼吸症候群に伴う医学的合併症として、高血圧や糖尿病、心筋梗塞や不整脈、脳血管障害などが挙げられますが、これらの疾患は睡眠時無呼吸症候群が重症であればあるほどリスクが高まると考えられています。

睡眠時無呼吸症候群は睡眠の質を下げるだけでなく、低呼吸や無呼吸によって睡眠中の人体を持続的な低酸素状態に陥れます。
低酸素状態とは人体にとって非常にストレスフルな状態であり、低酸素状態のストレスに反応して副腎からアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのホルモンが持続的に分泌されてしまいます。
これらのホルモンは血圧や脈拍、血糖値を上昇させ高血圧や糖尿病の原因になる上に、長期的には心筋梗塞や不整脈、脳血管障害の原因にもなってしまいます。

それぞれの医学的合併症について具体的に解説していきます。

高血圧

AHI=0を基準として比較した時、0<AHI<5の人で1.42倍、5<AHI<15の人で2.03倍、15≦AHIの人ではなんと2.89倍も高血圧の発症リスクが高いという報告があり、AHIが高くなればなるほど高血圧の発症リスクが高まると考えられています。

糖尿病

アメリカで行われた大規模研究「ウィスコンシン睡眠コホート研究」の結果では、AHI<5で2.8%、5<AHI<15で5.5%、15≦AHIで14.7%が糖尿病を合併しており、AHIが高いほど糖尿病を合併しやすいというデータが得られています。

冠動脈疾患

AHIが高いほど心筋梗塞などの冠動脈疾患に罹患しやすく、健常者と比較して5<AHIで約2倍増加するという報告もあります。
また、AHIが10増加する毎に冠動脈疾患の発症リスクが13%ずつ増加するという報告もあります。
これらの細かい数字は研究によって差がありますが、多くの研究結果から見てもAHIと冠動脈疾患の発症は概ね正の相関関係にあります。

脳血管障害

海外で行われた研究によると、5≦AHIの方はそうでない方と比べて脳血管障害の発症リスクが2.89倍も高まることが明らかになっています。
さらに、20≦AHIの方は5≦AHIと比較して約4倍も脳血管障害の発症リスクが高いとされています。
以上のことからも、AHIは多くの内科的合併症の発症リスクの指標にもなっています。

重症度によるその他の合併症とは?

睡眠時無呼吸症候群は医学的合併症以外に、交通事故の発生リスクも上げてしまいます。
夜間の睡眠の質が低下する反動で日中に強い眠気に襲われることがあるため、居眠り運転による交通事故が増えてしまうのです。

具体的に、アメリカで行われた研究では睡眠時無呼吸症候群の方は健常の方と比較して約7倍も交通事故が多く、重症度が高くなるにつれて事故の頻度も増加することが報告されています。

重症度による予後は?

最も気になるのは、重症度が寿命に与える影響だと思います。
結論から言えば、20<AHIの中等度〜重症の睡眠時無呼吸症候群であれば、生存率は有意に低下してしまいます。

これは、前述したような冠動脈疾患、脳血管障害の発症リスクが高くなることが大きく影響していると考えられています。
カナダで行われた研究では、20<AHIと20≧AHIの8年後の生存率を比較し、結果として生存率は20<AHI nの方で63%に対し、20≧AHI の方では96%と大きく差が出てしまったそうです。

以上のことからも、AHIが高くなると健康被害や交通事故など命に関わるような合併症の発生頻度が増加してしまい、ひいては寿命にまで影響することがよく分かります。

睡眠時無呼吸症候群の重症度を測定する検査とは?

結論から言えば、睡眠時無呼吸症候群の重症度を測定するためにはポリソムノグラフィー(PSG)と呼ばれる検査を受ける必要があります。またPSGを受ける前に実際にはいくつかの過程を経る必要があるため、重症度の判定までの流れを詳しく解説していきます。

問診

いびきや日中の眠気に悩む方が最初に受けるべきは問診です。
問診では主に診断をつけるための質問を行い、患者さんの病状を把握する目的で行われます。
またすでに睡眠時無呼吸症候群と診断されている方にとっても、病状や体調の変化を把握する上で問診は非常に重要です。

問診の具体的な内容は、睡眠時無呼吸症候群に特徴的ないびきの有無の確認や日中の眠気を評価します。
日中の眠気の評価にはエプワース眠気尺度を用いることが多く、24点満点中11点以上で日中の眠気が強いと判断されます。

問診で睡眠時無呼吸症候群を疑う場合、次に自宅での簡易検査を行うことになります。

簡易検査

簡易検査とは、主に自宅における1晩の睡眠中に、鼻圧センサー、胸腹部のインダクタンスプレチスモグラフベルト、オキシメトリーなどを用いて呼吸状態を簡易的にモニタリングする検査方法です。

自宅で行うことが多い理由としては、より日常に近い形での呼吸状態を評価できるからです。

具体的に鼻圧センサーは鼻からの空気圧を感知し、インダクタンスプレチスモグラフベルトは呼吸に伴う胸郭運動を評価し、オキシメトリーは体内がどれくらい酸素を取り込めているかを評価して、睡眠中の低呼吸や無呼吸の回数を評価しています。

簡易検査によってザックリと睡眠時無呼吸症候群の状態を評価し、よほど重症だと考えられる場合はすぐに治療に移りますが、多くの方はさらに厳密に評価するためPSGと呼ばれる検査を行うことになります。

精密検査(PSG)

PSGとは、簡易検査よりもさらに精密に呼吸状態を評価するため、専門の医療機関に1泊入院して行われる検査のことです。

PSGを行うことで最終的に睡眠時無呼吸症候群の確定診断をつける事ができると同時に、その検査結果は重症度の判定にも用いられるため非常に重要な検査と言えます。

PSGの具体的な内容としては、温度センサーや鼻圧センサーを用いて呼吸の気流を感知し、インダクタンスプレチスモグラフベルトを用いて呼吸に伴う胸郭運動を評価し、パルスオキシメーターを用いて酸素の取り込み度合いをチェックします。

簡易検査ではAHIの計算に用いられる総睡眠時間を正確に測定できず、代わりに総記録時間を用いて計算しているためAHIが過小評価されやすくなっていますが、PSGでは脳波や心電図、眼電図、筋電図を測定する事で総睡眠時間を正確に測定できるため、検査結果がより精密になります。

これらの検査を用いて最終的にはAHIを算出し、睡眠時無呼吸症候群の診断や重症度判定に用いられます。

睡眠時無呼吸症候群の重症度別の治療法は?


睡眠時無呼吸症候群は重症度、正確に言えばAHIの値によって治療法が変わってきます。

睡眠時無呼吸症候群の治療法は複数ありますが、重症者にはあまり効果を示さない治療法や、逆に軽症者には過剰な治療法もあるため、それぞれの病状に見合った適切な治療法を選択することが重要です。

具体的な治療法としては、減量、体位療法、OA療法、CPAP療法、外科的手術などが挙げられます。
それでは、重症度別に解説していきます。

軽症の場合

軽症の場合、一般的に減量や体位療法、OA療法が推奨されます。

まず減量については肥満を持つすべての睡眠時無呼吸症候群の患者さんに推奨されています。
減量によって頸部の脂肪が減れば気道が広がり、症状が出にくくなるからです。

次に、体位療法とは分かりやすく言えば「横向きで寝る」という治療法です。
仰向けで寝るよりも気道が通りやすくなるため比較的軽症の方に推奨されていますが、重症の方では改善しないことが多いです。

最後に、OA療法とは分かりやすく言えば「マウスピースをつけて寝る」という治療法です。
マウスピースによって下顎が後方に落ちにくくなり気道が広がるため、症状の改善が期待できます。
しかし、装着に伴う歯や歯肉の損傷など副作用もあります。

中等症〜重症の場合

20≦AHIの中等症〜重症の患者さんでは、まずCPAP療法が最も推奨される治療法となります。

CPAP療法とは、口や鼻を覆う特殊なマスクを装着し、マスク越しに空気を送ることで睡眠中に気道が塞がらないようにする治療法です。

他にも、中等症〜重症の患者さんであれば侵襲的な外科的手術も1つの選択肢です。
鼻や咽頭の解剖に異常があり物理的に気道が狭い場合や、顎や顔面の解剖的に気道が狭い場合は、外科的手術による解剖的異常の修正を行うことを検討してもいいかもしれません。

CPAP療法や外科的手術は軽症の方にとっては過剰な治療法とも言えるため、適切な治療法を選択するためにも専門の医療機関に受診することをオススメします。

まとめ


今回の記事では、睡眠時無呼吸症候群の重症度について詳しく解説させて頂きました。
睡眠時無呼吸症候群の重症度はPSGという検査で算出されたAHIによって評価され、その重症度によって治療法や合併症の発生率にも大きな影響が出ます。

AHIが高いほど高血圧や糖尿病の発症リスクは高まり、心筋梗塞や不整脈、脳血管障害の発症リスクも高くなり、長期的に見れば生存率すら低下させてしまうため、早期から適切な治療を行うことが肝要です。

治療法の選択もAHIが指標になるため、気になる方は是非専門の医療機関に受診してみてください。

よくある質問

Q.睡眠時無呼吸症候群の重症度はどう決まるの?

A.睡眠時無呼吸症候群の重症度はPSGと呼ばれる精密な検査によって算出された
AHIという数値で決まります。 AHIとは1時間あたりの低呼吸と無呼吸の合計回数のことで、5未満であれば睡眠時無呼吸症候群は否定的、5

Q.重症の睡眠時無呼吸症候群を放置したらどうなるの?

A.睡眠時無呼吸症候群に伴う低酸素状態は体に持続的なストレスを与え、高血圧や糖尿病の発症リスクを増加させてしまいます。
それに伴い、AHIの増加とともに心筋梗塞や脳血管障害などの命に関わるような重篤な疾患の発症率も増加していくため、長期的な生存率も大きく低下することが分かっています。