いびきとは
いびきとは、空気が気道を通り、周辺の粘膜が振動することで鳴る雑音を指します。
通常は空気が気道を通っても粘膜は振動せず、いびきも出ません。しかし、気道が狭まっている時は通った空気によって粘膜の振動が起こり、いびきの発生につながります。
そして、いびきは発生の頻度によって以下の2種類に分けられます。
種類 | 詳細 |
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散発性いびき | 疲労が溜まっているときやお酒を飲んだときなど、何らかの原因で一晩だけ現れるいびき。 一時的な筋肉の弛緩や扁桃腺の腫れに伴って起こるものなので、発生しても問題はない。 |
習慣性いびき | 就寝中、毎晩のようにかくいびき。習慣性いびきは、呼吸量や覚醒状態に応じて、 「単純性いびき」と「睡眠時無呼吸症候群に伴ういびき」の2種類に分けられ、 睡眠時無呼吸症候群に伴ういびきは体への負担が大きく危険。 |
いびきの原因
いびきの原因はさまざまありますが、最も多い原因は肥満です。
肥満になると、上半身だけでなく首周りや舌、気道にも脂肪がつきます。すると、通常よりも気道が狭い状態になるので、眠ったときに重力によって落ち込んだ舌が気道を塞いで、いびきをかいてしまうのです。
しかも、もともと日本人は首が短くて太く、そしてあごが小さい人が多いです。これにより、少々の肥満でも首周りに脂肪がつきやすくなるため、太っていなくてもいびきをかくようになります。
そのため、肥満体型になりやすい中年、特に上半身に脂肪がつきやすい(内臓脂肪型肥満になりやすい)男性は注意が必要です。
また、いびきは寝酒や喫煙によっても誘発されます。寝る前の飲酒や喫煙が習慣化している人は、いびきが悪化する前に生活習慣を改めるようにしましょう。
いびきは病気につながる?
しかし、なぜいびきを警戒する必要があるのでしょうか?それは、いびきは放置すると危険な病気につながる可能性があるからです。
睡眠時無呼吸症候群につながる可能性が…
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に何度も呼吸が止まる(無呼吸状態に陥る)ことによって中途覚醒が繰り返され、睡眠が阻害されてしまう疾患です。特徴として、睡眠時はほぼ毎回大きないびきをかきます。
この疾患が危険な理由は、命を落としかねない危険な合併症を次々と引き起こすからです。
例えば、睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に何度も呼吸が止まってしまうため、その度に脳は足りない酸素を補おうと全身の血流を活発にして酸素不足を補います。この状態が慢性化すると発症するのが高血圧です。
他にも、睡眠時無呼吸症候群は糖尿病や肥満の悪化などの生活習慣病を引き起こしたり、最悪の場合は脳卒中や心筋梗塞などを招いたりする可能性が高まります。
このように、睡眠時無呼吸症候群は「たかが、いびき」と絶対に甘く見てはいけない危険な病気なのです。
ベッドパートナーも不眠症に
睡眠時無呼吸症候群は、発症している本人だけでなく、同じ寝室で寝るベッドパートナーにも影響があります。それは、大きないびきの音による慢性的な睡眠不足です。
満足な睡眠が長期間とれないと、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下、ストレスなどを感じるようになります。
そして、慢性化すると次のような不調が見られるようになり、命を落とすケースもあり得ます。
- ・肥満
食欲をコントロールするホルモンが影響を受け、食べすぎて太ってしまう - ・免疫力低下
傷ついた細胞の修復や免疫細胞の活性化が正しく行われず、病気や感染症にかかりやすくなる - ・交通事故や作業中の事故
日中の眠気によって事故を起こしてしまう - ・うつ病
慢性的な睡眠不足とストレスによって気持ちが落ち込みやすくなり、うつ病を発症する
このように、いびきは本人だけでなく、それを我慢する周囲にも悪影響を及ぼしてしまいます。
もしパートナーがいびきをかいていたら?
ここまでの内容を読んで、パートナーにいびきの症状がある人はとても不安に感じたでしょう。
一刻も早く「いびきを治さなきゃ!」と思うかもしれませんが、いびきはとてもデリケートな問題です。一方的に「いびきがうるさい!なんとかして!」といっても、相手は治療に臨んでくれないどころか、2人の関係にヒビが入ってしまうかもしれません。
そこで、パートナーを傷つけずにいびきの自覚と改善を促すアプローチが必要になります。ここからは、パートナーにいびきをかいていると伝える際にぜひ気をつけてほしいポイントを3つご紹介します。
いびきをかいていることを責めない
まずは、いびきをかいている相手を決して責めないことです。
多くの場合、いびきをかいていてもその自覚は本人にはありません。たとえ自覚があったとしても、自分ではどうしたら良いかわからず、途方に暮れている場合も多いのです。
むしろ、本人の自覚なしにどんどん病状が進行していくことが、いびき・無呼吸の恐ろしいところでもあります。
ですので、決していびきをかいていることを責めず、相手を思いやることが大切です。
いびきのリスクを正しく伝える
次に、いびきのリスクを伝えて、改善を促していきましょう。
いびきのリスクについては、まだまだ世間の認知度が低く、あまり重要視されない傾向にあります。そのため、いびきがもたらす健康被害を的確に伝えることが大切です。
そして、正しく治療すれば、改善する可能性は十分あることも伝えましょう。
もしかすると、いびき程度で病院に行くことに、最初は旦那さんも抵抗を示すかもしれません。
しかし、医療機関で本格的ないびきや睡眠時無呼吸症候群の治療を行うことで、症状改善が見られるだけでなく、突然死のリスクを減らす効果が期待できます。
孤独にさせず一緒に解決していく姿勢を見せる
最後に最も重要なのが、いびきを2人の問題として、一緒に解決に取り組む意志があると伝えることです。
医療機関でのいびきや睡眠時無呼吸症候群の治療は、ときに多くの時間と費用を必要とするため、本人とってはストレスがかなり大きいものになります。
中には、治療を続けることができず、途中で断念してしまう人も多くいます。
そのため、いびき改善を夫婦二人三脚で取り組んでいく考えを伝えましょう。2人で力を合わせて解決していく姿勢を見せることで、相手も前向きにいびきを捉え、治療に臨んでくれるようになります。
すぐに実行できるいびきの対処法
では、いびきを止めるために、日常生活ではどんなことをすれば良いのでしょうか?
生活習慣の改善
前述したように、いびき・無呼吸で最も多い原因は肥満です。医療機関でも、治療の一環として肥満解消が行われるくらい、肥満がもたらすいびきへの影響は大きくなります。
そのため、日頃の生活習慣を見直し、肥満を改善するよう心がけることが大切です。
ですが、食生活改善やダイエット、適度な運動は、1人ではなかなか続かず、途中であきらめてしまいがちです。
そんなときは、パートナーも一緒に取り組むのがおすすめです。最近では、誰かと一緒にダイエットに取り組んだ方が1人でダイエットをするよりも効果があるとされています。
横向きで寝る
いびきを予防するには、横向き寝も有効です。
いびきは、仰向けで寝ると舌の落ち込みが促進されて発生しやすくなるため、いびき防止には横向き、もしくはうつ伏せで寝ることが医療機関でも推奨されています。
ただ、寝ている間は無意識に寝返りをうっているので、最初は横向きで寝ていても気がついたら仰向けになってしまいます。
そんなときは、横向き寝のしやすい枕に変えたり、うつ伏せでも苦しくないように寝具を見直したりするのが効果的です。また、同じ寝具を長年使い続けていると、肩や腰に負担がかかり、睡眠の質の低下につながります。いびき改善のためにも、寝具の見直しをしましょう。
飲酒を控える
日常的に飲酒、特に寝酒をよくする人は、いびき改善のために控えるようにしましょう。
寝る前に飲酒をすると、全身の筋肉の脱力が普段よりも促進され、より気道が狭まっていびきをかきやすくなります。
加えて、睡眠直前の飲酒は、アルコールの催眠効果で確かに寝つきは良くなりますが、利尿作用によって夜中に目を覚ましたり、早朝に起きてしまったりなど、熟睡を妨げるデメリットがあります。
質の良い睡眠にアルコールは絶対NGですので、寝酒は控え、晩酌は寝る2〜3時間前に済ませるようにしましょう。
禁煙する
喫煙も、アルコールと同様に気道の閉塞を促進し、いびきをかきやすくさせます。
とあるデータでは、喫煙の習慣がある人は、タバコを吸わない人よりもいびきの発症率が高くなるばかりか、悪化させる要因になると報告されています。
さらにタバコは、いびきだけでなくさまざまな病気のリスクを高めることにつながります。寝酒と同様に、喫煙についてもリスクを正しく理解し、やめるのがベストです。
いびき防止グッズを使う
いびきの予防には、いびき防止グッズを使うのもおすすめです。
例えば、口にテープを貼って口呼吸を抑え、鼻呼吸を促す「鼻呼吸テープ」や、鼻腔を広げて鼻の通りを良くする「鼻腔拡張テープ」は、軽症のいびきに対して一定の効果が見込めます。
また、これらはドラッグストアで簡単に購入することができるので、気になる人はぜひ探してみてください。
いびきは病院で治療しよう!
最後に、いびきを病院で治療する大切さについて解説します。
上記で紹介した方法は、いびきの中でも軽症のいびきに対しては一定の効果が期待できますが、中等症以上のいびきにはあまり効果を発揮しません。症状が重いいびきには、医療機関で行う専門的な治療が不可欠です。
「いびき程度で病院に行くなんて…」と思う方もいるかもしれませんが、いびきは放置すると命に関わるので、迷わず医療機関に相談するようにしてください。
いびき治療には健康保険が適用される
それでも、なかなか一歩を踏み出せない方もいるでしょう。そんな方が気になるのは、おそらく費用の問題だと思います。
ですが、医療機関で「いびきは睡眠時無呼吸症候群をはじめとした病気が原因である」と診断された場合、健康保険が適用され、医療費を抑えることができます。
病気以外が原因の場合は健康保険が適用されないため、自分が対象になるか、ぜひ一度医療機関へ相談してみてください。
まとめ
今回はいびきの仕組みや原因、対処法について解説しました。
ただの雑音だと思っていたいびきが、「実は病気のサインだった」というケースは多いものです。
まずは、自身のいびきがどんな原因で起こっているのかを究明し、病気の疑いがあればすぐに病院などの医療機関へ相談してください。
そして、パートナーにいびきの症状がみられる場合は、ぜひ話し合いの機会を持ち、治療を促すようにしてください。
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