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【どうすればいい?】妊婦のいびきについて徹底解説

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睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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どうして妊婦はいびきをかくの?

大きなおなかに手を添える女性の様子まずは、どうして妊娠するといびきをかくようになるのか、いびき発症のメカニズムから紐解いていきます。

妊娠による体重増加が原因

そもそもいびきとは、睡眠時の呼吸によって発生する異常音のことで、さまざまな原因によって気道が部分的、もしくは完全に閉塞することで起こります。

その中でも、特に多い原因が肥満です。肥満になると、腹部の周辺だけでなく首周りや舌、喉、気道にも脂肪がつきます。人間は、起きている間は筋肉の支えがあるため、気道が勝手に狭まることはありません。
しかし、横になって眠りに入ると全身の筋肉が弛緩し、舌や粘膜が喉の奥に落ち込みやすくなります。そこに、気道の脂肪沈着が加わると、空気の通り道が極端に狭くなり、呼吸のたびに粘膜がふるえて、「ガァー」や「ゴォー」という大きな音を発するようになるのです。

妊娠も、上記の肥満のような体型変化や体重の増加が見られるため、いびきが発生しやすくなります。加えて、妊娠中の悪阻やストレスも、いびきを誘発する要因と考えられます。




出産後もいびきには要注意

ベッドで眠る女性無事出産を終えて妊娠期間が終了しても、女性にとっていびきは要注意です。

あごの骨格がいびきにつながることも

もともと日本人は、欧米人に比べていびきをかきやすい傾向にあります。その理由は、日本人は欧米人に比べて下あごが奥まっていて、首が短く、気道が狭いためです。それにより、妊娠を終えて肥満体型が解消されても、いびきを再発することがあります。

特に女性は、華奢で小顔な人が多いため、体型にかかわらずいびきにつながることがあるので、注意が必要です。

鼻づまりもいびきの原因に

慢性的な鼻づまりによる口呼吸も、いびきを引き起こす原因です。

口呼吸が習慣化してしまうと、寝ている間も無意識に口呼吸になってしまいます。寝ている間の口呼吸は、舌の落ち込みにつながります。そして、長時間口を開けていることによって口腔内が乾燥するため、よりいびきの音が大きくなるのです。
鼻づまりを引き起こす疾患は、下記の通りです。

  • ・風邪
  • ・花粉症
  • ・アレルギー性鼻炎
  • ・慢性副鼻腔炎
  • ・鼻中隔弯曲症など

閉経後にいびきがさらに悪化

女性は、閉経後に突如いびきを発症することがあります。

女性の体内では、2種類の女性ホルモンが分泌されており、エストロゲン(卵胞ホルモン)は主に妊娠の準備と女性らしい体づくり、プロゲステロン(黄体ホルモン)は妊娠の維持を行っています。
これらの働きに加えて、エストロゲンには肥満抑制効果(脂肪の沈着を下半身中心にして、気道など上半身に脂肪がつくのを防ぐ)、プロゲステロンには気道開存効果(気道が閉塞していびきをかくのを防ぐ)があります。
つまり、妊娠などのケースを除いて、女性はいびき最大の原因である肥満を防止する効果と、気道が狭くなるのを防ぐ効果によって、いびきがかなり抑えられているのです。

しかし、これらの効果を得られるのも、女性ホルモンが安定して分泌されている間だけです。女性は、40代を過ぎるとホルモン分泌が減少し始め、60代になると閉経し、分泌量が激減します。すると、いびき抑制効果が薄れ、いびきをかくようになります。実際、若い頃はいびきをかいたことがなかった女性が、閉経してから突然いびきをかくようになったケースは多くあります。

ですから、もし現在いびきをかいていなかったとしても、将来的にいびきをかくようになる可能性は大いにあるのです。




妊婦がいびきをかくのはしょうがない?

ベッドの上で大事にお腹を触っている女性の様子

では、体型変化や体重増加を避けられない妊婦がいびきをかくのは、どうしようもないことだと諦めるしかないのでしょうか?確実にいえることは、いびきは絶対に放置をしてはいけないということです。いびきは治療せずに放っておくと、さまざまな合併症を引き起こすことにつながります。

睡眠時無呼吸症候群につながる

いびきは放置すると、睡眠時無呼吸症候群を発症させます。

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が停止する無呼吸状態に繰り返し陥ることで、その度に眠りが妨げられ、慢性的な睡眠不足になる疾患です。主な初期症状は、慢性的な寝不足、熟睡感の欠如、日中の激しい眠気、倦怠感などで、特徴として睡眠中はほぼ毎回大きないびきをかきます。

発症した最初の段階では不眠症状が主なため、「最近ちょっと寝不足だな…」、「しっかり寝たはずなのに疲れが取れないな…」程度にしか捉えられず、治療が必要だとは考えられません。加えて、大きないびきをかくにもかかわらず、本人は自覚症状に乏しいため、疾患自体に気づかれないことも多くあります。
医療機関を受診する患者でも、そのほとんどが家族や周囲の人に大きないびきを指摘されて受診したケースです。

このように、本人には一切自覚がない中で、病状だけがどんどん進行していくというのが、この疾患の恐ろしいところでもあります。そして、疾患に気づかずさらに症状が悪化すると、もっと危険な合併症を招く可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の危険な合併症

代表的なのが、高血圧です。

睡眠時無呼吸症候群は、無呼吸状態に何度も陥るため、体は低酸素状態になります。このままでは生命維持ができなくなるので、脳は足りない酸素を補おうと心拍数を上げて血流を促進させます。これが長く続くと、高血圧を発症し、肥満の悪化や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病につながります。
そして、病状がより深刻になると、動脈硬化を発症し、最終的には脳卒中や心筋梗塞などの突然死を起こしかねない危険な病気をも引き寄せてしまうのです。

さらに、日中の強い眠気による死亡事故や、ストレスによるうつ病発症の可能性も高まります。ただでさえ、妊娠中は悪阻やストレスなどによって睡眠が十分に取れないことがある中で、無呼吸による症状も加わると、身体的・精神的な影響は非常に重いものとなります。

おなかの赤ちゃんに影響を及ぼすことも

睡眠時無呼吸症候群は、母体だけでなくおなかの中の赤ちゃんにとっても要注意です。

無呼吸による酸素不足は、胎盤や胎児の酸素不足をももたらします。それに伴い、流産や早産、胎盤機能不全、胎児発育不全のリスクが高まると研究などでも報告されています。
これまで、妊娠期の睡眠時無呼吸症候群のリスクや胎児への影響は、あまりクローズアップされてきませんでした。ゆえに、世間的にも知名度が低く、いびきが病気だと認識されていないのが現状です。ですから、いびきを甘く見ず、特に妊娠期のいびきは胎児にも悪影響を及ぼすことがあると、しっかり知ることが大切です。




いびきに悩む妊婦にぜひやってほしい対処法

医者の診療を受ける女性最後に、現在妊婦でいびきに悩んでいる人にぜひやってほしい対処法を紹介していきます。

まずは落ち着いて対応を

ここまで、いびきが発生する原因や、放置するリスク、胎児への影響について解説してきましたが、だからといって極端に恐れる必要はありません。まずは落ち着いて、冷静に対応しましょう。

確かに、いびきを引き起こす最も多い原因は肥満ですが、実は一時的な要因(風邪、ストレスなど)によっても発生することがあります。特に、妊娠中はかなりのストレスに晒されているので、些細な原因がきっかけとなることもあります。ただし、このような一時的な原因によって引き起こされたいびきは、原因が解消されると自然と治まり、また通常通りの睡眠に戻ることができます。
そのため、「いびき=危険」と即座に考えてしまうのではなく、自分のいびきや無呼吸がどのような状態なのかきちんと把握することが大切です。

下記に、睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックを記載しています。妊娠中のいびきに悩んでいる人は、ぜひお試しください。

  • ・ほぼ毎晩いびきをかく
  • ・家族に指摘されるぐらい大きないびきをかく
  • ・睡眠中にしばしば、首を絞められたような窒息感で目覚める
  • ・朝、目を覚ましたときに熟睡感がない
  • ・日中に耐え難い眠気を感じる
  • ・しっかり寝たはずなのにいつも体がだるい
  • ・夜中に尿意で起きる
  • ・寝汗をかく
  • ・寝相が悪い
  • ・妊娠前に肥満気味だった
  • ・妊娠中の体重の増え過ぎを医師から指摘されたことがある

睡眠薬の服用はNG

いびきや無呼吸によって、熟睡できず苦しい思いをしている妊婦の人は多いでしょう。ですが、ぐっすり眠りたいからと自己判断で睡眠薬を服用するのは絶対にNGです。

睡眠薬を服用すると、睡眠時の筋肉の弛緩や、それに伴う舌や粘膜の落ち込みを促進することにつながります。それにより、余計にいびきや無呼吸を誘発し、症状を悪化させてしまう可能性があります。
また、妊娠中の薬の服用は、胎児に影響を与えるリスクも考慮しなければいけません。そのため、自己判断で薬を購入し、服用するのは絶対にやめてください。必ず医師の判断を仰ぎましょう。

抱き枕で仰向け寝防止

いびき・無呼吸を防ぐ対策として、抱き枕を活用した横向き寝は非常に効果的です。

人間は、仰向けで横になるとより舌が落ち込んでいびきをかきやすくなる性質があります。そのため、一般の睡眠時無呼吸症候群の治療においても、仰向け寝での睡眠は推奨されておらず、その代わりに横向きやうつ伏せで寝るよう指導がされます。
特に、妊娠中は大きなおなかでも苦しくないように、横向き寝用の抱き枕やクッションをよく利用します。これを活用し、横向き寝をしやすくすることで、いびきの発生をかなり抑える効果が期待できます。

かかりつけの産婦人科へ相談

これが最も大切なことですが、もし長期間いびきや不眠症状に悩んでいるならば、躊躇せず医師へ相談することを検討しましょう。

前述したように、妊娠中はさまざまな体の変化やストレスによって、いびきをかいたり、十分な睡眠が取れなかったりします。その影響を、医学的知識のない一般の人が自己判断で解決することは非常に困難です。最悪の場合は逆効果になって、母体と胎児の両方に深刻な影響を与える危険も考えられます。
そうならないためには、やはり医師による正しい診断と、適切な治療が必要になります。ですので、1人で悩まず、必ず医療機関を受診するようにしてください。

どこの医療機関を受診すればよいかわからないときは、ひとまずかかりつけの産婦人科に相談すると良いでしょう。




まとめ

笑顔な妊婦今回は、妊婦がいびきをかいてしまう原因と危険性、対処法について徹底解説しました。

肥満体型の人がいびきをかきやすくなるように、妊婦も体重が増加するためいびきをかきやすくなります。ですが、これらをしょうがないと放置すると、睡眠時無呼吸症候群を発症させ、母体と胎児の双方に悪影響を与える危険があります。
そのため、いびきや無呼吸、それに伴う日中の眠気などに長い間悩んでいる妊婦は、1人で悩まず医療機関を受診しましょう。適切な治療を受けることで、母体と胎児の健康を維持し、安心して出産することにつながります。

この記事が、いびきで悩む妊婦が次の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。




よくある質問

Q.どうして、妊娠するといびきをかきやすくなるのですか?

A.妊娠すると体重増加が起きるため、それに伴い気道への脂肪沈着が発生していびきをかきやすくなります。また、妊娠中のストレスも、いびきをかきやすくさせる要因になります。

Q.妊娠中のいびきは放置しても大丈夫ですか?

A.いびきは放置すると、睡眠時無呼吸症候群の発症につながります。この疾患を発症すると、母体の健康だけでなく、胎児にも深刻な影響を与える危険があります。そのため、放置せず、速やかに医療機関を受診して治療を受けることが大切です。

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