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睡眠時無呼吸症候群の治療・治し方

睡眠時無呼吸症候群を放置すると?リスクや生存率を解説

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睡眠Dr. 編集部

睡眠の質を上げる健康医療メディア睡眠Dr.の編集部です。いびき治療や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治し方、睡眠の質を良くする方法、睡眠障害(不眠症、ショートスリーパー、ナルコレプシー、過眠症)についてなど、睡眠のエキスパート達によって執筆されるコンテンツは、医学的根拠に基づいて作成されています。

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睡眠時無呼吸症候群重症生存率


睡眠時無呼吸症候群患者の5年生存率は84%、8年生存率は60%と言われています。
これは、厚生労働省研究班の調査によるものです。5年生存率が84%ということは5年以内に死亡する確率は16%です。また8年以内に死亡する確率は40%ということになります。
睡眠時無呼吸症候群による死亡のリスクはあまり注目されていませんが、実は死亡率の高い病気なのです。

睡眠時無呼吸症候群による死亡のリスクは、無呼吸による突然死や生活習慣病との合併などがあります。
ここでは、睡眠時無呼吸症候群が引き起こすリスクについて解説します。

突然死のリスク

睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者の突然死の確率は、健常者の2.6倍と言われています。
睡眠時無呼吸症候群とは「一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこる。または睡眠1時間あたりの無呼吸や低呼吸が5回以上おこる」ということです。
実際に10秒息を止めるだけでもつらいのに、それが睡眠中に何度もおきてしまうのです。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の無呼吸と覚醒を繰り返します。しかし、何らかの理由で覚醒できないと突然死となってしまうのです。
また、睡眠時無呼吸症候群は心臓への負担がかかるため心血管系の合併症による突然死を引き起こす原因にもなります。

生活習慣病のリスク

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病と併発している場合が多く見られます。ただのいびきだと思って治療せずに放っておくと、生活習慣病の発症や悪化につながる、ということになります。
いびきや睡眠中の呼吸停止、昼間の強い眠気、起床時の頭痛などが、睡眠時無呼吸症候群の症状です。これらの症状に気付いたら専門の病院を受診しましょう。
ここでは、睡眠時無呼吸症候群が生活習慣病につながる原因について解説します。

なぜ高血圧になるのか?

通常、睡眠中は副交感神経が働き、心臓は落ち着いた状態を保っています。しかし睡眠中に呼吸が停止してしまうと、身体は呼吸を再開するために覚醒し、交感神経が優位に働きます。交感神経が優位になると、血液循環を高めようとして血圧が急上昇するのです。
睡眠中は、心臓や血管も本来は休む状態です。しかし、睡眠時の無呼吸により夜中でも活動することで心臓や血管に負担がかかり、その結果、高血圧を発症するのです。

実際、眠時無呼吸症候群患者の約50%に高血圧の合併がみられます。また、高血圧患者の約30%に睡眠時無呼吸症候群の合併がみられるという調査報告があり、睡眠時無呼吸症候群と高血圧の合併率は非常に高いといえます。

なぜ糖尿病になるのか?

睡眠時無呼吸症候群により睡眠の質が低下すると、インスリンの正常な分泌がされなくなり糖尿病と合併しやすくなります。
糖の代謝で重要な役割を果たすのが、インスリンです。インスリンはホルモンの一種で、血糖値を下げる働きがあります。食事によって血液中の糖分が増えると、すい臓からインスリンが分泌されます。そうすると糖分はインスリンの働きにより筋肉に送り込まれ、エネルギーとして利用されます。インスリンが分泌されないと、血液中の糖分が増えてしまい糖値の上昇につながり糖尿病になるのです。

実際にイギリスの研究では、2型糖尿病患者における睡眠時無呼吸症候群(SAS)の有病率は65%、アメリカでは77%という報告されています。
また、習慣的にいびきをかく人は、かかない人に比べて糖尿病になるリスクが2倍になるという結果があきらかになっています。

なぜ脳卒中になるのか?

高血圧は血管に負担をかけます。血管に負担がかかり脳の動脈が破れると、脳内出血が引き起こされます。また高血圧により血管に傷がつくと、それを修復しようと血管壁が厚くなります。血管壁が厚くなると、血管は狭くなるため詰まりやすくなり、梗塞を引き起こす原因となるのです。
睡眠時無呼吸症候群による高血圧が脳卒中のリスクを高める要因になります。

なぜ虚血性心疾患になるのか?

虚血性心疾患とは、「狭心症」や「心筋梗塞」などのことです。
心臓は心筋という筋肉で出来ています。この心筋が拡張と収縮を繰り返すことで、全身に血液を送り循環させています。しかし、心臓の筋肉に血液を送る冠状動脈が狭くなったり、塞がったりすることで、心臓の筋肉へ十分な血液が送られず、血液が流れなくなった状態を虚血性心疾患といいます。

睡眠中に無呼吸と覚醒を繰り返すことで、血圧も激しく変動し心臓の結果に負担をかけてしまいます。そうなると、心臓が正常に働かず以下のような心臓疾患のリスクが高まります。

  • ・心臓病
  • ・不整脈
  • ・狭心症
  • ・心筋梗塞
  • ・心不全

睡眠時無呼吸症候群の患者は、そうでない人と比較して心血管疾患発症のリスクが1.15倍高いという報告もされています。
睡眠時無呼吸症候群やいびきによる、睡眠中の酸素不足・ストレスが心疾患を悪化させているのです。

交通事故のリスク

睡眠時無呼吸症候群は、長時間睡眠をとったとしても睡眠不足になってしまいます。その原因は夜中に睡眠中の呼吸停止と呼吸再開のために覚醒を繰り返すため、何度も起きてしまい、睡眠の質が低下するからです。

睡眠の質が低下すると、日中に強い眠気が襲ってきたり、集中力がなくなったり、やる気がおきなかったりします。そんな状態で車の運転をすると、居眠り運転で重大な事故を起こしやすくなります。

実際に2003年には、山陽新幹線で運転士が居眠りをしたまま時速270㎞で約30㎞の距離を運転した、ということがありました。幸いにもけが人はいなかったということですが、重大な事故につながってもおかしくないことです。驚くことに運転士は、事前に10時間の睡眠をとっていたにも関わらず居眠りをしているのです。この運転士は、睡眠時無呼吸症候群と診断されています。このように、絶対寝てはいけない状況下でも居眠りをさせてしまうのが睡眠時無呼吸症候群の恐ろしいところなのです。

いびきや起床時の頭痛、日中の強い眠気が頻繁に起きる場合は、一度検査を受け、車などの運転は控えましょう。

睡眠時無呼吸症候群の合併症による生存率


睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や脳卒中など様々な病気と合併しやすいのが特徴です。
ここでは、睡眠時無呼吸症候群と合併しやすい病気の生存率について説明します。

高血圧の生存率

高血圧が原因で直接死に至るということはありません。しかし、高血圧を改善しないと脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの重大な疾患を発症させてしまいます。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」では、血圧の正常値は120/80mmHgまで、高血圧は、病院で何度か測定して、最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上とされています。日本における高血圧患者は4,300万人いると推定され、その中で適切な処置をされている人は1,200万人しかいないとされています。残りの3,100万人は高血圧と気付いていないか、気付いていても放置しているということです。

感染症以外の死因の中で、高血圧と喫煙が最も大きな危険因子とされています。高血圧は自覚症状が少ないのですが、心筋梗塞などにつながるので早めに対処する必要があるのです。
高血圧の自覚症状としては、頭痛や頭重感、めまい、動悸などがありますが、多くの人は自覚症状がありません。

睡眠時無呼吸症候群と高血圧は非常に合併率が高いので、睡眠時無呼吸症候群の症状を確認したら高血圧も疑い、適切な治療を始めることが大事です。

糖尿病の生存率

糖尿病の生存率は、1型糖尿病と2型糖尿病のどちらかによって変わってきます。1型糖尿病とは膵臓にあるインスリンを作るβ細胞が阻害され、インスリンをまったく作れないか、ほとんど作ることができなくなる病気です。子供や青年に多く発症し、注射によってインスリンを補う治療が必要です。
1型糖尿病患者の場合、健康な人と比べたときの平均寿命が男性で11.1年、女性で12.9年短いということが報告されています。

2型糖尿病は、体質と食生活などの生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。この場合、臓でインスリンは作られるものの量が不十分であったり、インスリンの機能が弱くなったりします。
2型糖尿病の場合、50歳前に糖尿病を発症すると平均寿命が10年短縮すると言われています。

糖尿病も高血圧と同じで自覚症状が少ない病気です。しかし、進行してしまい中期や末期になると様々な症状が現れます。

中期の症状としては次のようなものがあります。

  • ・尿の回数が増える
  • ・のどが渇く
  • ・疲れやすくなる
  • ・体重低下

また末期の症状としては次のようなものがあります。

  • ・糖尿病性網膜症
  • ・糖尿病性腎症
  • ・糖尿病性神経障害

末期症状まで進行してしまうと、普通の生活を送るのが困難になり、血糖値を下げても症状の改善がみられないということになってしまいます。

睡眠時無呼吸症候群と糖尿病は、食べすぎや運動不足による肥満など、同じ原因を持っています。睡眠時無呼吸症候群や糖尿病を予防するために普段の生活を改善しましょう。

脳血管疾患の生存率

睡眠時無呼吸症候群と合併をおこす可能性の高い脳血管疾患とは、脳卒中や高血圧脳症、脳血管性認知症などを含む脳の血管トラブルが原因の病気全般のことを指します。また、脳卒中のなかにはくも膜下出血、脳出血、脳梗塞が含まれます。

脳卒中全体の5年生存率は57.9%で、くも膜下出血54.9%、脳出血57.9%、脳梗塞62.8%という報告がされています。

そして睡眠時無呼吸症候群の人は、そうでない人に比べて脳卒中のリスクが2.89倍高まるということも明らかになっています。

睡眠時無呼吸症候群は脳卒中のリスクを高めます。いびき、日中の眠気、起床時の頭痛、高血圧などの症状がある人は、病院で相談して睡眠時無呼吸症候群の検査をした方が良いでしょう。

虚血性心疾患の生存率

日本における死因の1位はガン、そして2位は心疾患です。
虚血性心疾患の中でも心不全の5年生存率は50%となっています。さらに心不全による入院患者の8%が入院中に亡くなると言われています。いわゆる突然死の原因の大部分を占めるのが、虚血性心疾患なのです。

無呼吸と覚醒を繰り返す睡眠時無呼吸症候群は、心臓に大きな負担がかかるので心臓の病気につながります。
虚血性心疾患の危険因子は、次のようなものです。

  • ・動脈硬化
  • ・高血圧
  • ・脂質異常
  • ・喫煙
  • ・高血糖
  • ・内臓脂肪型肥満
  • ・不整脈

これらの危険因子は睡眠時無呼吸症候群と共通するものが多く、心疾患のリスクを減らすためにも睡眠時無呼吸症候群の治療が必要なのです。

睡眠時無呼吸症候群の診断方法


睡眠時無呼吸症候群の診断では、問診、スクリーニング検査、ポリソムグラフィ(PSG)検査などが行われます。
まずは問診があり、その後検査方法を選択します。
スクリーニング検査では、動脈血酸素飽和濃度を計測するパルスオキシメーターを、自宅で睡眠中に装着し検査をします。
またポリソムグラフィ(PSG)検査は、通常1泊2日の入院にて、夜間就寝時に脳波の電極、鼻・口の気流センサー、胸部・腹部の動きをみるセンサー、心電図、パルスオキシメーターを装着し、睡眠中に測定を行います。これにより睡眠時無呼吸症候群の重症度を判定し、治療による効果判定を行います。

睡眠時無呼吸症候群の予防方法


睡眠時無呼吸症候群の原因の一つは、肥満です。肥満解消の為には、適度な運動や正しい食生活を送ることが大事です。
予防方法としては次のようなことがあります。

  • ・適度な運動と食生活改善によるダイエット
  • ・過度な飲酒を控える
  • ・口呼吸から鼻呼吸に変える
  • ・禁煙
  • ・横向きに寝る

睡眠時無呼吸症候群の予防および治療のためには、生活習慣を改善することが必要です。病院での治療だけでなく自分でも努力をして予防しましょう。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法

睡眠時無呼吸症候群の治療方法には、マウスピース療法、CPAP療法、外科手術などがあります。

マウスピース療法は、マウスピースによって下あごを前方に出し、固定して空気の通り道を開く方法です。
CPAP療法は、睡眠中に特殊なマスクを装着し、常に空気を気道に送り気道が塞がらないようにする治療方法です。睡眠時にマスクを装着しなければいけないため、神経質なは注意が必要です。
マウスピース療法やCPAP療法などは、対症療法のため根本的な治療にはならず、やり続けないといけないというデメリットがあります。
外科手術では気道を塞ぐ原因を突き止め、その部分を切除します。切除するため身体に負担はかかりますが、根本的な原因を治療するのには有効です。痛みは気になるところですが、最近ではレーザー治療などの痛みの少ない手術もあるので、選択肢の一つとして覚えていた方が良いでしょう。

まとめ

この記事では睡眠時無呼吸症候群の生存率について、生活習慣病など合併症の生存率とあわせて紹介しました。
睡眠時無呼吸症候群は、一歩間違うと死に至る恐ろしい病気です。
生活する中で睡眠時無呼吸症候群の症状があれば、直ちに病院で検査することをおすすめします。

よくある質問

Q.睡眠時無呼吸症候群の5年生存率は?

A.睡眠時無呼吸症候群患者の5年生存率は84%です。ただし、脳血管疾患や虚血性心疾患などの合併症を起こしてしまった場合は生存率が下がります。いびきの奥に重大な病気があることを理解し、早めに治療しましょう。

Q.睡眠時無呼吸症候群の突然死のリスクは?

A.睡眠時無呼吸症候群は、突然死のリスクを高めます。睡眠中の無呼吸になると、心臓や血管に負担がかかり狭心症や心筋梗塞につながり死に至る可能性があります。

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