うつ病の不眠症は、本当に眠れない

不眠症を訴える人の多くは、自分ではよく眠れていないと思っていても、多くの場合に実際はよく眠っているわけですが、これは神経症性の不眠症患者に限った話です。
うつ病性の不眠患者の場合は、本人が眠れないと主張するのに加えて、家族や医師が実際に観察してみると本当に眠れていないのです。短期的に寝ている間も脳は睡眠状態になれず、2〜3時間眠るともう目が覚めてしまい、眠れなくなってしまいます。眠気がないから眠れない、というのではなく、眠いのに眠れないという最悪の状態になります。

うつ病性の不眠症の場合、食欲減退、体重減少といった症状が出ます。うつの人は日中変動といって、一日の中でも時間帯によって非常に激しく気分が移り変わります。午前中はずっと低調でどんよりした雰囲気だったのに、夕方くらいから急に人が変わったように明るく活発になる、といった具合です。このように不安定な精神のため、自分の不眠症を深刻に悩み苦しんで、最悪の場合自殺を図ることもあります。

神経症性の不眠症とうつ病性の不眠症を見分けるポイントの一つは、夜中に起きてしまったときの行動です。神経症性の人は、夜中に起きてしまって眠れなくなってしまったことに対して焦り、ひどい場合には普通に寝ているのんきな家族に対して怒りを覚えることがあります。一方で、うつ病性の場合は、自分が夜中に起きてしまったら、普通に寝ている家族を起こさないように、そっと寝室を離れてひとり静かに夜空を見上げるようなタイプの人です。

神経症の不眠症は、患者本人の睡眠中の映像を見せて実際には眠れていることを理解してもらったり、必要な睡眠時間にこだわらないように考え方を変えてもらうなど、精神的な治療でほとんどが治ってしまいます。

うつ病性の場合は、中枢神経機能がバランスを崩していることが原因なので、薬による治療が必要になります。いわゆる睡眠薬や精神安定剤を投与して睡眠をうながす方法もありますが、うつ病の薬も併用します。不眠症そのものは病気ではなく、うつが引き起こす症状の一つに過ぎません。根本の原因であるうつ病を治療すれば、不眠症も自然に治ることになります。

うつ病性の患者に対しては、厳しい態度で接することは厳禁です。また決して「がんばって」などと励ましてはいけません。周囲は良かれと思ってやったとしても、本人にとっては、「自分は十分にがんばっているのに、これ以上どうやってがんばるんだ」と逆に精神的負担を与えてしまい、最悪の場合は追い詰められて自殺を図るケースがあるからです。