不眠症の人は実際は眠っている

不眠症に悩み、「一睡もできないんです」と医師に相談する人の多くは、実際は、自分でも気付かないうちに数時間は眠っていることが多いのが実情です。ただ、自分では寝たという意識や記憶がないだけなのです。

ここに睡眠不足に悩んでいるAさんとBさんがいます。ふたりのうち、不眠症でより大きな苦痛を感じているのはどちらでしょうか。
Aさん:昨日4時間しか眠れなかった。自分が4時間眠ったと認識している。
Bさん:昨日は一睡もできなかったと信じている。(実際は4時間眠っている)

実際の睡眠時間は同じですから、二人とも肉体的負担は同じはずです。しかし、Bさんのほうが明らかにげっそりしています。
なぜこうした違いが出てくるのでしょうか。これは、ひとえにBさんの気持ちの持ち方が原因です。自分は眠っていないと信じ込んでしまい、そのために本当は眠っているのに、自分は一睡もしていないと信じてしまっています。人の心と身体は一心同体です。「病は気から」と言われるように、人間の身体は気持ちの持ちようで、良いほうにも悪いほうにも変化します。実際はしっかり眠っていて肉体も健康のはずなのに、「自分は眠れていない」と心が信じてしまうと、肉体的にもいろいろな異常が出てきてしまうのです。
つまり、実際に物理的に眠ったかどうかよりも、本人が「眠ったと感じる」ことができることのほうが大切なのです。

不眠症の人は、実際はよく眠っています。それを家族や医師に指摘されるとムキになって否定する傾向があります。自分はこんなに不眠症で悩んでいるんだから、実際には眠っているなんてウソだ、と絶対に認めたくないのです。そうした気持ちが、実際は十分に眠っているのに自分はずっと寝ていないという精神的な寝不足とも言うべき精神状態となり、自分は不眠だとより強く思い込むようになります。
そうした自称不眠症の患者さんを納得させるためには、睡眠障害専門のクリニックで一晩眠ってもらい、熟睡している様子をビデオに撮影してその映像を本人に見てもらうのが最も効果的です。自分がぐっすり寝ている映像を見せられて、あなたは実際は眠れていますから心配ありませんよ、と医師に説明されるとようやく納得します。そうすると不思議なもので、これ以上の「治療」は一切しなくても、不眠症は治ってしまうというケースがめずらしくありません。不眠症の原因は、患者本人のこころの中にあることが少なくないのです。