時差ぼけ

短時間のうちに2つ以上の時間帯(タイムゾーン)を移動すると、人間の睡眠サイクルは乱れてしまいます。体内時計は出発地の時間なのに、到着した場所で目に飛び込んでくる景色はまったく違う時間なので、脳が混乱して現地時間に瞬時に適応することができなくなります。このような状態を「時差ぼけ」といいます。(英語では、ジェットラグといいます)。医学的には時間帯域変化症候群と呼ばれ、簡単に言うと急性の睡眠障害のひとつです。

また、肺、胃、肝臓などの人間の臓器には、それぞれ独自の時計があることがわかっています。臓器がそれぞれもっている体内時計が乱されて、バイオリズムが不安定となり睡眠のペースが乱れてしまいます。到着地での昼間の活動レベルが低下するだけでなく、食欲不振や胃腸の不調などさまざまな症状が出ます。

現地ではまず夜に眠れなくなります。下手をすると朝まで完全に一睡もできないこともあります。なんとか眠れた場合でもサイクルが乱れているため、レム睡眠が少なくなり、朝まで連続してぐっすり熟睡することができません。翌日に仕事があっても昼間の集中力が上がらず、会議の効率は下がって文章を書く作業などもいっこうに進みません。また、食欲がなくなったり便秘や胃痛に悩まされることになる場合もあります。

飛行機で横断するタイムゾーンの数が多ければ多いほど時差ぼけはひどくなります。
太陽は東から西へ動きます。太陽の動きと同じように東から西へ向かって飛ぶときは、時差ぼけは比較的軽い程度で済みます。しかし太陽の動きに逆らって、東向きに飛んだときは、時差ぼけの症状が非常に重くなり、回復にかかる時間も長くなります。
実は人間の体内時計は約25時間周期で動いているので、東へ向かって一日のサイクルが24時間よりも短くなると、それに体が順応するのが生理的に難しいからです。たとえば日本から時差が7時間のロサンゼルス(アメリカ西海岸)へ行った場合は、現地の時間に完全に順応するためには約10日かかるといわれています。逆方向に同じくらいの距離を移動した場合は、約7日間で順応できます。西方向(ヨーロッパ方面)に旅行した際は、現地に着いてからは比較的ラクですが、日本に帰るときは「東向き」の移動になるために、帰国後はひどい時差ぼけに悩まされることが少なくありません。ちなみに、南北に移動する場合(日本からオーストラリア・ニュージーランドなど)は、時間帯をまたぐことがないため、時差ぼけは発生しません。

子どもは大人と比べると上手に時差に順応することができますが、年齢とともに順応性が下がってきて、時差ぼけの症状はひどくなります。普段から運動をしている健康な人、規則正しい生活をしている人、よく眠れている人は時差ぼけになりにくいようです。性格的には、明るく積極的で社交的な人は、内気で消極的な人と比較すると時差ぼけになりにくいというデータもあります。また、人間はおもしろいもので、仕事で緊張して行く場合と比べて、気楽に遊びで行く場合のほうが比較的時差ぼけの程度は軽くなります。