睡眠の役割とは何か
人はなぜ眠るのか、という根源的な質問に対して、たったひとつの確定した答えはありません。現在わかっているだけでも、睡眠にはたくさんの役割があります。

■休息
単純に考えて、一日の心身の疲れを癒すために眠る、という考え方が一般的です。体と脳を休息させるために眠りは必要不可欠です。よく眠ることによって大脳は休息すると同時にその機能を調整して、翌日朝から再び正常な指令を全身に送ることができます。睡眠が不足すると、大脳が疲労を回復できず、感情のコントロールがきかなくなるなどの障害が出てきます。頭痛、全身のだるさ、集中力の欠如といった症状も出てきます。睡眠中は体温が下がり血液の温度も下がります。この少し「冷たい」血液が脳の中を流れることにより「頭が冷やされる」ことになり、それが脳の疲労回復に役立ちます。
しかし、睡眠中の脳の活動は決して完全な休息状態ではありません。一日のうちに吸収した膨大な情報を整理し、必要なものと不要なものに分類し、必要なものについてはその情報を記憶として脳に記録しています。睡眠中の脳は、活動レベルがゼロになるほど完全な休息になることはなく、場合によっては体が活動している昼間の脳よりも活動が活発なこともあります。
この分類・記録の作業が夢を見ることと関係していると言われています。夢を見ている比較的浅い眠り(レム睡眠)の時に、記憶を脳に記録する作業をしていると考えられているのです。
■成長ホルモン
寝る子は育つ、とよく言います。よく眠る子どもは大きく成長することを、昔の人は経験的に知っていたようです。これにはしっかりとした科学的裏づけがあります。
人間は寝ている間に成長ホルモンを分泌します。成長ホルモンには細胞を再生・修復する新陳代謝の作用があり、特に眠りに落ちてからの最初の3時間程度の間に集中的に分泌されます。小学生くらいの子どもは、一度眠りに落ちてしまうと、周囲がゆすっても叩いても起きないくらい深い眠りに入ります。まさにこの時に、子ども体内では成長ホルモンが活発に分泌されているのです。
成長ホルモンは子どもが大きく成長するために必要ですが、実は子どもだけでなく大人にも必要なものです。成長ホルモンが不足すると、体内に老廃物が溜まってしまい、血管が詰まったり肌や頭皮が新しく生まれ変わらないなど様々な弊害が出てきます。
睡眠不足になると肌が荒れて化粧のりが悪くなるのは、多くの女性が経験から知っています。質の高い睡眠をとることによって、たっぷりと成長ホルモンを分泌させて肌の新陳代謝を高めれば、朝起きたときの肌の調子がまったく違います。眼の周りにクマができるのも、成長ホルモンの不足が原因です。
■免疫
風邪を引いたら寝るのが一番だ、とよく言いますが、これは睡眠の目的のひとつを適格に表しています。人間は睡眠中に免疫力が高まり、病気を直そうという自然の力が働きます。風邪っぽいなと感じた時は、少し長めの睡眠をたっぷりととれば、免疫力と自然治癒力が高まって、朝には治ってしまうでしょう。逆に言うと、睡眠不足の時は体の免疫力が下がっていますから、風邪の菌に対する抵抗力が弱っていて、風邪を引きやすくなります。
■ストレス物質除去
眠っている間に脳内でつくられる睡眠物質は、神経細胞から発生する活性酸素を分解してくれます。睡眠は神経細胞の機能を回復させると同時に、ストレスの原因ともなる有害物質を除去してくれるのです。